第一部
第六章 〜交州牧篇〜
七十一 〜諸葛姉妹〜
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、夏侯惇から話とは珍しい。
「貴様、なかなか腕が立つらしいな」
「……いや。お前などにはまず、敵うまい」
「誤魔化すな。華琳様は常々、貴様の腕前を褒めておられる。あの華琳様が、贔屓目で仰せになる筈がなかろう」
「事実を申しているまでだ。無論、私は武人。戦いは厭わぬが、将としての力量ではいろいろな者には遠く及ばぬ、そう自覚しているまでだ」
「ならば、それを確かめてくれよう。私と勝負しろ!」
その言葉に、彩が私の前に進み出る。
「貴様、先ほどから黙って聞いておれば。無礼にも程があるぞ!」
「何だ。私は土方に言っているのだ、貴様などには用はない」
その言葉に、彩がフン、と鼻を鳴らす。
「そうか。私では敵わぬと見て、殿に喧嘩を売るつもりか」
「な、何だと! もう一度言ってみろ!」
「ああ、何度でも言ってやるさ。殿、このような手合い、相手にされる事はありませぬぞ」
「貴様ぁ! 私を愚弄するかっ!」
「無礼な態度を取るから、相応の返しをしたまでの事。弱い奴ほど良く吼える、とは申したものだ」
彩の挑発に、完全に激高した夏侯惇。
「貴様! そこまで大言を吐くなら、私と勝負しろ!」
「いいだろう。此処ならば余人に迷惑も及ぶまい」
そう言って、夏侯惇は背負った大剣に手をかけた。
「待て」
「待たぬ! 邪魔をするなら、貴様も叩き斬るぞ!」
「そうではない。真剣での勝負は認められぬ。これを使え」
私は、稽古用の木刀を二人に手渡した。
「何だこれは?」
「決まっているだろう。互いの得物とは違うが、これならば条件も同じだ」
ブンブンと、木刀を振り回す夏侯惇。
「軽いな。これでは力が入らんぞ」
「全く、文句ばかり垂れる奴だ。曹操殿も、さぞ苦労されている事であろうな」
「な、何っ!」
凄い形相で、夏侯惇は彩を睨み付けた。
「手に馴染んだ得物でなければ、私には及ばぬ事に気付いたか。無礼を詫びれば、許してやらん事もないぞ」
「なめるな! 華琳様随一の武たる私が、たかが得物ごときで貴様などに後れは取らん!」
「よし、その言葉、二言はないな?」
「くどい!」
すっかり、彩の思惑に載せられる夏侯惇。
……華琳が、常日頃から頭を悩ませる訳だ。
間合いを取り、両者が対峙する。
審判は、愛里に任せる事とした。
「勝敗は、どちらかが降参するか、得物を失った時点で良いな?」
「はっ!」
「いいだろう! だが、私には降参などあり得んぞ!」
「よし。では愛里」
「はい。両者、前へ」
愛里の合図で、二人は進み出る。
「始め!」
「はぁぁぁぁぁっ!」
まず、夏侯惇から仕掛け始めた。
カン、と甲高い音がして、木刀が合う。
「流石、馬鹿力だけはあるようだな」
「ほざけ!」
「えいっ!」
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