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至誠一貫
第一部
第六章 〜交州牧篇〜
七十一 〜諸葛姉妹〜
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陶謙様にずっとお仕えしていたい、それが本心です。ですが、それが叶わぬ願いなら、陶謙様の信じる道を歩みたいと思っています」
「私が、陶謙殿が見られたような人物とは限らぬぞ。それでも陶謙殿の仰せに従うと申すか?」
「はい。私は陶謙様信じる、ただそれだけの事です」
 真っ直ぐに私を見据え、糜竺はそう言い切った。
「陶謙殿」
「はい」
「……貴殿の言葉、お受け致しましょう。この徐州を預かる事は約定出来ませぬが、糜竺殿の事は、確と」
 ふう、と息を吐く陶謙。
「ありがとうございます、土方さん。これで、肩の荷が下りたわ……。良かったわね、山吹さん」
「はい。今まで、ありがとうございました、陶謙様」
 陶謙に向かい、糜竺は頭を下げた。
「そして、これから宜しくお願い致します、土方様。私の事は、山吹とお呼び下さい」
 ……いきなり、真名を預けるか。
「信頼の証、と受け取って良いのだな?」
「はい。勿論、その信頼に背くようであれば、お返しいただきますが」
「ふっ、言うな。私の事は、好きに呼ぶがいい」
「わかりました。では、歳三さま、とお呼びします」
 稟と同じようで、何か微妙に異なる呼ばれ方のようだ。
 ……それはそうと、気になる事を確かめておかねば。
「ところで陶謙殿。陳登殿、それに陳珪殿はどうされるおつもりか?」
 この徐州に取って、この二人も重要な人物である事は確かだ。
 だが、陶謙が言及したのは糜竺のみ。
「ああ、その事でしたら。陳登さん」
「は。私と父は、この地に残る事にしました。父はもう老齢ですし、私もこの徐州を離れる気はありませんので」
 やはり、決意は微塵も揺るがぬ、そんな顔をしている。
 私が、口を挟む余地もなさそうだ。
「ゴホッ、ゴホッ……」
 陶謙が、また咳き込み出した。
「陶謙殿、もうお休み下され。拙者は、これにて失礼致します」
「お呼び立てした上、何も出来ずに申し訳ありません。こんな身体でなければ、一献差し上げたいところなのですが」
「いえ、養生なさって下され。……では、御免」
 糜竺、いや山吹は陶謙と話があるというので、私は彩と愛里を伴って退出した。


 数日後、輜重隊が到着した。
 護衛してきたのが夏侯惇だったのは、少々意外であったが。
 流石に城内では陶謙の迷惑になると考え、徐州城の外で合流する事とした。
「では、確かに引き渡したからな」
「うむ、ご苦労であった。華琳にも宜しく伝えてくれ」
「ふん、貴様に言われるまでもないわ」
 相変わらずの鼻息だな。
 どうやら、荀ケ同様、華琳と親しくする者には敵意を示すらしいな。
 その態度に、彩がムッとした表情を見せるが、私は目で制した。
「ところで、土方。貴様に話がある」
「ほう。聞こうか」
 夏侯淵ならまだしも
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