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乱世の確率事象改変
狂い咲く黒の華
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して落第点であり、後悔するくらいなら初めから戦うなと弾劾される薄汚い偽善の心。
 死した部下を誇らない将に兵は付いて来ない。猪々子が良く知る紅揚羽でさえ、使い捨ての駒だと吐き捨てる兵士達を侮辱も卑下もしないのだ。

「ならいい。だったら分かるでしょ? 趙雲と会うってことは危ういの。救いたくて救いたくて仕方なかった人と出会ったらそれが記憶を戻す鍵になるかもしれない」
「でも詠はアニキが戻るのを望んでるんじゃないのか?」

 やはり猪々子では読めないか、と詠はため息を一つ。仕方ない、こればかりは自分の口で説明するしかないのだ。
 遠くで見つめる鳳統隊の真剣な眼差しを見つける。彼らも理解している。ずっと彼を見てきたモノ同士だ。出る答えなど分かり切っていた。
 説明している間に準備しろ、と一つ頷き無言で伝えた。

「望んでるに決まってるじゃない。でも状況が悪い。あいつが戻る時は……劉備軍の前じゃ絶対にダメなの」

 ずっと願ってきた。だからこそ、詠はどんな状況をも予想してきた。
 彼の記憶が戻る事を願えば願うほど、彼の記憶が戻って……どんな行動に出るかを考えないわけが無い。
 だから恐怖した。だから不安だった。だから……秋斗を一人で行かせるわけにはいかなかった。

 大きく深呼吸。心を落ち着けなければ震えが見えてしまいそうで。
 眼鏡をクイと持ち上げて、悲哀が深く刻まれた瞳で猪々子の翡翠を覗き込んだ。

「“黒麒麟”は劉備の為の将。自分の気が狂ってでも黒麒麟は劉備と作る世界を望んでた。それが一つ」

 自分でさえ解き明かせなかったから哀しくて、詠の声は震えていた。
 そして次の言の葉には、寂寥と悲哀がより深く刻み込まれていた。

「でも一番大切なことは……たった一つ。
 大事な友達を切り捨ててでも欲しい世界ってどんなだと思う? 一緒に笑い合ってたバカ達の血と肉で作り上げてでも欲しかった平穏ってどんなだと思う?
 身が凍るような痛みの中で、一つ消えては約束して、一つ消えては誓いを立てて、そうして進んで来たから逃げられない。
 いくら絶望に堕ちたとはいえ、ううん、絶望に堕ちたからこそ、自責の鎖に縛られ過ぎて……狂い死んじゃう可能性と、裏切る可能性があるのよ」

 有無を言わさぬ圧力は猪々子の反論を封じる。信じてやれよ、とは彼女も言わない。雛里や月、そして詠並に秋斗のことを理解しているモノなど、徐晃隊くらいしか居ないのだから。
 きゅ、と握られた拳。不安を握りつぶすように詠は拳を固めた。

「猪々子は此処で兵士と一緒に居なさい。あのバカを連れ戻して、それから正式に使者の仕事を始める。成都の警備兵には“荀攸”と徐晃が慣れない食物でお腹を壊したので幾日の休息をとってから入るとでも言っといて。鳳統隊の第四部隊長と連
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