3部分:第三章
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第三章
式は袁を中央に置きその左右に花嫁をそれぞれ配した。やはり二人同じに見える。
人々はだ。その二人を見て首を傾げながら話をするのだった。
「これはまた一体」
「どういうことだ?」
「花嫁が二人になるとは」
「妖術だろうか」
「わしにもわからん」
花嫁の父も首を傾げるばかりであった。
「何故だ。何故二人になった」
「お父上にもわかりませんか」
「今の事態は」
「全くわからん」
また首を傾げさせての言葉だった。
「これはどういうことだ」
「左様ですか」
「それではこれは怪異でしょうか」
「何かしらの」
「だとすればどうした怪異だ?」
それは誰もどうしてもわからなかった。だが道士だけはかなり警戒する顔で式を取り仕切っていた。そうして式はつつがなく終わった。袁も内心いぶかしむばかりだった。
「妻が二人になるのはいい」
それ自体はいいとした。側室なぞ普通にあった時代だからだ。
「だが」
しかしであった。道士の言葉が気になっていた。それで胸に忍ばせているその札の上に己の手を置いてみる。すると何故か不安が消える様に感じた。
そうしてそのうえで花嫁達と共に床に入った。所謂初夜であった。
そこに入る時にだ。道士はまた彼に言ってきた。
「宜しいですね」
「わかっています」
彼のその言葉に頷く袁だった。
「札をですね」
「何があっても御身体から離すことのないよう」
「わかっています。それでは」
「はい、何があろうとも」
このことを念押ししたのであった。そのうえで袁は花嫁達と床の間に入った。人々はそれを見届けて後は彼等だけで無礼講であった。道士も生臭もの以外を勧められ楽しく過ごした。
そして誰もが酔い潰れた時だった。不意に床の間から恐ろしい鳴き声があがった。それを聞いて誰もが酔いから醒めた。
「何だあの声は!?」
「床の間からだぞ」
「まさか」
「すぐに行きましょう」
一人酒を飲まずまんじりともせずその場にいた道士が一同に告げた。
「部屋に」
「は、はい」
「それでは」
「一体何が」
皆彼の言葉に従いすぐにそこに向かった。するとそこにあったのは。
何と部屋の中に一羽の灰色の鶴に似た大きな鳥が燃え盛っていた。鉤の様な嘴に雪の様に白い大きな爪を持っている。その目が赤く爛々と輝いている。
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