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羅刹鳥
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第一章

                         羅刹鳥
 中国清代の話である。
 康熙帝の時代から雍正帝の時代になっていた。国は安定し繁栄を極めていた。確かに満州民族による異民族統治であるがその統治は素晴しいものであり国は落ち着き富んでいた。そんな時代の北京の話である。
 ある金持ちの息子、名前を袁昇叙という。彼が妻を貰った。
 花嫁の行列はそのまま彼に家に向かう。その中に婚礼の儀式を司る道士もいた。彼は道服を着て厳かにその行列の先頭にいた。そして前を見ていぶかしむ顔で言うのであった。
「いかんな」
「いかんとは」
「何かあるのですか?」
「前に墓場がある」
 道士は前に見える墓場を指差して後ろの一行に話した。
「あれはよくない」
「しかしです、あれはです」
「いつも通る道ですし」
「それ程不吉に思われることもないのでは?」
「そうです」
 これが周りの意見であった。
「それは別に」
「そう思いますが」
「そう、普段なら問題はない」
 道士はいぶかしむ顔のままであった。
「普段ならな。しかしだ」
「しかしですか」
「そうだ。墓場に陰の気が満ちている」
 陰陽五行のそれであった。それが墓場に満ちているというのである。
「それがだ」
「では道を変えられるのですか?」
「今から」
「そうした方がよい」
 これが道士の主張であった。
「さもなければよからぬことになる」
「そうですか。それでは」
「今から別の道を」
 話はこれで決まりかけた。しかしここで花嫁の父がその白いものが半分以上になっている辮髪を揺らしながら来てだ。大きな声で言うのだった。
「いやいや、それは待ってくれ」
「道を変えるなと仰るのか」
「そうです。婚礼の行列が道を変えるなぞないことです」
 彼の言うことも一理あった。
「ですからそれはです」
「駄目だと言われるのですな」
「墓場なぞ何処にでもあります」
 父はここでも一理ある話をした。
「ですから」
「ふむ。それではですか」
「このまま行きましょう。いいですな」
 花嫁の父の言葉は絶対である。それでは誰も逆らうことはできなかった。そうしてであった。彼等はこのまま先に進んだ。そして墓場の横に来るとだった。
「!?風が」
「出て来た!?」
 何の前触れもなく風が出て来た。そのうえで一行を包み込む。それはとりわけ花嫁の乗っている篭の周りを数回回った。そのうえで突如として消えたのだった。
 誰もがその風にいぶかしんだ。何しろいきなり出て来て突如消えたのだ。皆風のことをいぶかしみながら話した。
「何なのだ、今の風は」
「一体」
「何だ?」
「危うい」
 ここでまた言う道士だった。
「あれが出て来るか。ならばだ」
「どうされたのですか
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