暁 〜小説投稿サイト〜
相模英二幻想事件簿
File.1 「山桜想う頃に…」
prologue
[2/2]

[9] 最初 [2]次話
藤崎という人物は、かなり風変わりで面白いヤツだ。考え方は一般とは少しズレてはいるが…。
「で、何か用件があったんじゃないのか?」
 私は苦笑しつつ、藤崎に用件を話すよう促した。
「あ…そうだった。お前今、京都の近くに住んでるんだろ?」
「そうだが…それがどうかしたか?」
「俺さ、来週そっちに行くんだけど、会えないかと思ってな。」
「コンサートか?もう立派な音楽家だな。」
「何言ってんだよ。英二だって立派な探偵じゃないか。」
 藤崎にそう言われ、私は溜め息混じりにこう返した。
「なったは良いんだがな…実入りが少ない仕事ばかりだよ…。」
「ま、どんな仕事も最初はそんなもんだろ?名が売れさえすれば、依頼だってひっきりなしに来るさ。」
 藤崎は事も無げに返してきた…。クソッ!こいつはテレビにも雑誌にもラジオにすら名前が挙がったってのに…!私も音楽家になりゃ良かったのかねぇ…。
「その肝心要の名が売れる様な仕事が、今のところこないんだよ!」
「まぁ…辛抱強く待つしかないな。でだ、会えそうなのか?」
 藤崎は今の話を、何の躊躇いもなく切った。全く…これでもモテるんだから、ハーフってヤツは羨ましい限りだ…。
 私はそんなことを思いながらも、手帳を開いてスケジュールをチェックした。無論、チェックするほどのスケジュールはない…。手持ちの依頼は、昨日迄で完結しているんだから当たり前だな。
「多分、来週は大体大丈夫だとは思う。急な依頼が無ければの話だけどな。」
「そうだな。それじゃ、直ぐにこっちの予定をメールで送るから。亜希夫人も連れて来るんだろ?」
「当たり前だ。たまには連れ出してやらないとな。いつも家を守ってもらってるんだから、これくらいのサービスがないと。」
「ハハ…そうだな。それじゃ、メール見てくれよな。いつが良いかは、メールで返信しといてくれ。」
「了解したよ。それじゃあな。」
 私がそう言って受話器を置くと、亜希は隣で目を輝かせながら私に言ってきた。
「あなた、旅行ですか?」
 いつから聞いていたんだ…?現役探偵の私でさえ、彼女の気配を感じなかったぞ…。
「あ…ああ。来週だが、数日行ければと…。君もたまには良いだろ?ここ最近、旅行なんて行けなかったから…。」
「勿論!もう今日は土曜日だから、早く支度しておかないと…。」
 亜希は何やらブツブツ言いながら、私なぞ眼中にないといった風に部屋へと下がってしまった。
「亜希…朝飯は…?」
 私の声は彼女の耳に届かないようで、部屋からは陽気な鼻歌が聞こえていたのだった。




[9] 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ