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藤崎京之介怪異譚
case.6 「闇からの呼び声」
X 12.19.PM7:41
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いうのは、一体どのような人物だったんですか?」
 俺がそうメスターラー氏へ問うと、彼は溜め息を洩らして答えた。
「それですが…彼を知る手掛かりは、全て意図的に抹消されてるんです。どうもニコラウス自身が消した様で、若かりし頃の彼を知る術は皆無でした。晩年の手記が少し残るのみで、後は全く見付からなかったんです。」
「そうですか…。」
 まぁ…そうだとは思ってたが、晩年の手記しか残らない程に自分の何を消したかったんだろう…。
 現在では、もうヴェッベルグ家もエルネスティ家も存在しない。この二つの名家に、一体何が隠されてるというんだ?
 それに…ヴェッベルグ伯とエリーザベトの婚姻理由もいまいち良く分からない。幸福だった…それは資料からも解るが、婚姻以前、二人はどこで知り合ったんだ?そもそも、ヴェッベルグ伯が公爵家の令嬢に自ら結婚を申し込むなんて…。
 たが、最大の謎は…エリーザベトがなぜ顔半分を失う程の火傷を負ったかだ。この件には、未々疑問点が多い…。
「フリッツ。エリーザベトだが、なぜ顔に火傷を負ったんじゃ?」
 アウグスト伯父も俺と同じ疑問を持った様で、メスターラー氏へエリーザベトの火傷の理由を問った。メスターラー氏はその伯父の問いに、表情を曇らせて驚くべき事実を口にしたのだった。
「エリーザベトの火傷ですが…父である公爵に負わされたそうです。」
「…!」
 俺達はそれを聞き言葉を失った。負わされた…ということは、故意に焼いたということだ…。実の父が娘の顔に火傷を負わせるなんて…尋常じゃない。
「なぜ…父が娘の顔を?」
 俺が恐る恐る尋ねると、メスターラー氏は深く溜め息を吐いてこう話してくれたのだった。
「どうやら…夫人が浮気していたと思っていたようです。公爵は思い込みの激しい性格だったようで、相手の男は八つ裂き刑にされ、夫人は地下牢に入れられたとされています。男と夫人が刑に処され時、既に三歳になっていたエリーザベトは公爵に折檻され続け、その時運悪く暖炉へ倒れ込んでしまったと古文書にはありました。尤も、これは三つ隣の町のぺテロ教会に残されていた筆者不明の古文書で、七十年程前に古い聖書の表紙から見付かったものだそうです。聖書に隠す程、この事実を後世に伝えたかったのでしょう…。」
 隠さなければ消されてしまう…そう筆者が考えていたのなら、これは事実で間違いないだろう…。
 しかし、そんな怪我を負ってよく生きていたと思う。当時の医術ではかなり厳しかったに違いないからな…。そもそも、暖炉へ倒れるなんて…意図的にやったとしか考えられない。夫人が浮気して作った子だと断定する術もなかった筈だが、その思い込みが娘すら憎悪の対象にするなんて…。
 恐らく、公爵は娘エリーザベトを消したかったのだろう。だが、いかな公爵でも身内を手にかければ周囲に責
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