case.6 「闇からの呼び声」
X 12.19.PM7:41
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当然、我が子の顔を見ることも叶わず、それを繰り返すうちにエリーザベトは病に倒れ、そして悲哀の内にその生涯を閉じた。ヴェッベルグ伯も妻の死の半年後、絶望の中で自ら命を絶った…というのが話の全てだという。
「だが…なぜ公爵家に入れられたヴェッベルグ伯の息子の子孫が、わざわざ伯爵家の姓を名乗ったんじゃ?曲がりなりにも公爵家は王族の血筋。格下である伯爵家の姓を名乗る必要もあるまいに…。」
そうアウグスト伯父が問うと、メスターラー氏は後の話をするために口を開いた。それはニコラウスの話であり、伯父の問いに対する答えだった。
エリーザベトとヴェッベルグ伯の亡き後、エルネスティ家は没落の一途を辿った。ニコラウスが公爵の地位に就いた時には、もはやその座も危うい程に傾いていたという。
そのため、ニコラウスは王にある嘆願を出した。それは、既に滅んだヴェッベルグ伯の姓を復活させ、伯爵家を再興するというものだった。
どうやらニコラウスは伯爵家と公爵家の関係を知っていたようで、王にもそれは嘆願書で触れていたようだ。その嘆願書は紛失しているが、そうでなければ公爵家が伯爵家を復興させるなど王が許す訳がないだろう…。
そうしてニコラウスは伯爵家の復興を果たすが、その後なのだ…資料が改竄され始めたのは…。
「メスターラーさん。今の話だと、公爵家…自身が守るべき家に非難が及ぶよう仕向けていることになりますが、それは一体どうしてなんです?」
俺は首を傾げて問い掛けた。この話が真実ならば、自身さえその身分が危ぶまれる筈だ…。なのに、ニコラウスはそれと知りながら伯爵家を復興させたことになる。
だが、それにさえメスターラー氏は答えを調べていたのだった。
「ニコラウスは恐らく、公爵家自体を討ち滅ぼしたかったのではと考えます。その理由として、彼には公爵家の血が半分しか流れていない。いわば純粋な直系ではないのです。そうなると、わざわざ伯爵家を復興させたことも頷けます。王がそれを了承したこともね。そして何より、先祖が自分の娘であるエリーザベトの死に無関心であったことが、このニコラウスには赦せなかったのでしょう。そのためか、資料内でのエルネスティは全て格下として描かれ、ともすれば単なる使用人扱いなのも理解出来ようというものです。」
エルネスティ家への憎悪…だとすれば、それはにわかには信じられない程に大きなものだったに違いない。資料の中には、民が暴徒化して伯爵を殺した…なんてものもあるくらいだから、当初のニコラウスは民さえも憎悪の対象だったのかも知れない。
だが…そこまで憎めるものか?顔も知らない曾祖父母なんて他人も同じ。そんな二人のために地位や名誉を捨てるなんて真似出来るのか?
いや…未だ何かあるはずだ。そこまで彼…ニコラウスを突き動かした何かが…。
「ニコラウスと
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