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藤崎京之介怪異譚
case.6 「闇からの呼び声」
W 12.14.AM10:13
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ったんじゃよ。要はじゃ、その人物が各地で同じ禍を意図的に起こした可能性があるということじゃよ。単なる噂だけでは、さすがに教会や聖堂は建たんからのぅ。」
 俺は…正直分かっていなかった…。伯父の言ったことが正しければ、何故そんなことを行う必要が?それも、この伝承は一つ二つじゃない。
 それじゃ、それらが全て実際に起きた事件によるものなのか?いや…それはいくらなんでも飛躍し過ぎてる。ともすれば、他の事件さえ同一犯に仕立てたと考えた方が筋が通る。とすれば…この資料を書き残した者は、例のエルネスティという人物ではないに違いない。
 では、この資料を書き記したのは…一体誰なんだ?悪戯にしては度を越えている。これはもはや…“執念”と言っても良いだろう…。
「伯父様…この件、エルネスティという人物とは無関係なのではないでしょうか?」
「…何故そう思うのじゃ?」
 伯父に問われ、俺は暫し考えを纏めてから口を開いた。
「第一に、残されている不鮮明な内容の資料ですが、どれも犯人が別人である方が自然です。それを故意にエルネスティなる過去の人物を登場させることで、わざとうやむやにしています。第二に、ここまで資料を改竄出来る人物は…かなりの地位がなくてはならない。わざわざ教会や聖堂を建てさせられる程に…。これでは、まるで犯人を知っていて庇っているように感じます。」
「要するに、事件そのものを闇へと葬りたかった人物が居る…と、そう言いたいんじゃな?」
 伯父の言葉に、俺は頷いて答えた。
 俺の反応に、伯父は腕を組ながら再び窓の外へと視線を変えて呟いた。
「では…一体誰が…。」
 それに俺は答えなかった。未だその答えに辿り着くヒントを得ていないのだ。恐らく…残された資料を書いた人物の近親者が事件を起こしたと推測出来るが、その人物を探し出す手掛かりはどこにもないのだ。
「メスターラー氏の調査を待ちましょう。」
 俺がそう言うと、アウグスト伯父は「そうじゃな…。」と囁くように答えたのだった。




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