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藤崎京之介怪異譚
case.6 「闇からの呼び声」
W 12.14.AM10:13
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誰も“計画"なんて言わなかったし、そういった風には考えていなかった。飽くまでも、何かが点在しているといった感じだからだ。伯父とてそれは解っている筈なのだが、なぜそんなことを言ったのだろう…。
「伯父様…。」
「お前の疑問は分かっとるよ。」
「それじゃ…どうしてそんなことを?」
「…それはな、この地方にある聖堂や教会が…同じような伝承の上に建てられとるからじゃ。」
 それを聞き、俺は眉を潜めた。それが初耳だったからだ。だが、そのアウグスト伯父の話を聞いてはっきりしたことがあった。
「伯父様…まさか、私はこのために呼ばれたのですか?」
 俺がそう問うと、アウグスト伯父は顎髭を擦りながら渋々と話始めた。
「その通りじゃ…。当初はお前を呼び寄せるつもりは無かったんじゃ。先手を打って早々に片を附ける予定じゃったが…わしらだけではどうにもならんかった…。」
「えっ…!?宣仁叔父様も居てですか?」
「そうじゃ。最初に元さえ断てばどうにかなると考えとったんじゃが、その肝心な大元が分からんかったんじゃよ。どの教会や聖堂の古文書を調べても、全てが似たり寄ったりでのぅ…。原本が分からんようになっとったんじゃ…。」
 そこまで言うと、アウグスト伯父は深い溜め息を吐いた。
 恐らく、伯父達が当初考えていた事柄だけでなく、新たに分かったことが伯父を悩ませているのだろう。まるで先の見えない螺旋階段を登っているようだ…。
 俺は困り果てているアウグスト伯父に、こう問い掛けてた。
「それは…誰かが故意に手を加えた…と?」
「そうとしか考えられんの。その為、お前をわざわざ呼び寄せたんじゃしな。未だ時間があるのであれば、お前を平穏な生活から逸脱させたりなどせなんだ。」
 その答えを聞き、俺も伯父と同じ様な溜め息を洩らした。
 恐らく、この件については何年も前から動いていたのだろう。この伝承はこの地方では有名らしいし、前回の資料からも年月が分かってるし…。
 だが…宣仁叔父とアウグスト伯父の二人でも解決出来なかったことを、どうして俺なんかを呼び寄せて解決出来ると考えたんだ?それに…聖アンデレ教会のことはどうも手を着けてなかったようだし…。一体どうなってるんだ?
 俺が思考を巡らせていると、伯父は徐に窓辺へと歩み寄り、そこから外を眺めながら再び溜め息を洩らした。
「わしらが迂濶だったんじゃ。もう少し早ぅに気付いておったら、こうも後手に回らずに済んだんじゃ…。」
「何が…ですか?」
 俺がそう問うと、伯父はこちらへと振り返ってこう答えた。
「全ての教会、聖堂に保管されとる同種の資料は、同じ者によって書かれとったんじゃ。」
「それって…」
「お前の考えとる通りじゃ。その同一人物が、意図的に同じ事件に別の脚色を施してばらまいたんじゃ。それ故に原本が辿れんか
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