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藤崎京之介怪異譚
case.6 「闇からの呼び声」
W 12.14.AM10:13
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合唱曲。歌詞に至っては既に復活後のことに触れており、イエスの再来にまで及んでいる。イエスの復活と再来は全ての死や悪の滅びを意味し、神への信仰を鼓舞するに相応しい楽曲と言える。だが、何故この曲を加えなくてはならないと解っていたのか?俺にはそれを知る術はないのだ。
 俺達が演奏を終えた時、人々の混乱は収まっていた。そして、人々を怯えさせたあの動く屍も…ただの骸へと戻っていたのだった。
 後から宣仁叔父に聞いたのだが、この時、奴は未だ完全に覚醒してなかったというのだ。だから、この程度で引き剥がすことが出来たのだ。もし、完全に覚醒していたら…シンクレア神父と同じ様になっていたという。
 あんなもんが幾つも町中を徘徊してるとこなんて…想像もしたくない…。そんな光景はホラー映画だけで充分だ。早くこれを解決せねば、次に誰が狙われるか分からないからな…。
 団員達に人々を落ち着かせるよう指示すると、俺は宣仁叔父を探した。すると、宣仁叔父ではなく、アウグスト伯父が俺の所へと来て言ったのだった。
「京之介、宣仁は病院へやるために別室へとやったわい。わしが見たところ、肋が数本折れとったし、腕や足も打撲しとったからのぅ。」
「そうですか…。完治にはどれ程かかると思いますか?」
「あやつも歳じゃし、一月は見た方が良いじゃろうな。」
 アウグスト伯父はそう言うと、仕方無しと言った風に溜め息を吐いたのだった。
 俺はこれからのことを考えた。宣仁叔父が戦線離脱となれば、今まで考えていた作戦は使えない。アウグスト伯父が言ったように、宣仁叔父も随分なお歳だ。完治するまで迂濶に動かすなんて出来ないからな…。だが、ここで足踏みしている訳にもいかない。
「かなり活発になってきとるのぅ…。」
 アウグスト伯父は周囲に聞こえないよう俺へと囁いた。
「ええ…。このままでは、また次々に犠牲者が出るでしょう。何としても止めなくては…。」
「そうじゃのぅ…。これはもはや空間記録の模写とは違い、そう容易く事が運ぶとは考えられんしのぅ。」
「それが問題なのです。今までの対処法で、どこまで太古の霊を追い込めるかが分かりません。私には音楽と信仰しか武器がありません。だから…これで遣るしかありません。」
 俺がそう言うと、アウグスト伯父は俺の肩に手を掛けて言った。
「お前はそれで充分じゃ。それ以上のことは考えんで良い。今、お前が遣るべきことは、その音楽で人々を癒すことじゃ。」
「しかし…それでは…。」
「いいか、よく聞くのじゃ。この件で、少なからず町に恐れが広がるじゃろう。人の恐怖は霊を助長させおる。それを少しずつでも取り除けるならば、早い段階で悪霊どもの計画を打ち崩すことも出来ようて。」
 俺は伯父の言葉に、妙な引っ掛かりを覚えた。アウグスト伯父は“悪霊共の計画"と言ったが、今まで
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