case.6 「闇からの呼び声」
W 12.14.AM10:13
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の御名により命ずる!忌まわしいき悪霊よ、我が友の躰より退け!」
そう言うや、近くに備えてあった聖水を手に取り、それを遺体へと浴びせかけた。だが…それは何の効果も齎さなかった。遺体となった教授はそれに対しニタリと笑い、茫然とする叔父へと言い放った。
「このようなまやかし、何故我に効くや?愚かな人間、真実を知らぬ者。貴様らはただ、死ぬために生きているのだ。今、その身が朽ちても良かろ?」
奴がそう言ったかと思った刹那、宣仁叔父は弾かれる様に飛ばされてしまった。それを見た人々は恐怖に狂い、聖堂内はパニック状態になってしまったのだった。
俺は飛ばされてしまった宣仁叔父の元へと駆け付けて抱え起こすと、叔父は囁くように言った。
「何をしている…早く…早く演奏をせんか…!」
「何を言ってるんですか!そんな場合じゃ…」
「早くせい!」
叔父はなけなしの力で俺を怒鳴ると、痛む躰を引き摺るように立ち上がった。
「私が足止めしているうちに…早く始めるのだ!」
俺はハッとした。次に演奏されるべき曲は…例の最後の曲だったのだ。何かが関係しているとは思っていたが、まさか…こういうことだったなんて…。
その事に気付いた俺は、団員達の元へと戻った。そこには誰一人欠けることなく、全員が俺が戻るのを待っていたのだった。内心は今にも逃げ出したいだろうに…。だが、これさえも自分達の仕事だと感じているようだ。長い間、こんなことばかりに付き合わせた俺が悪いのだ。
こんなことに慣れてはいけない…俺が一番良く解っている筈なのに、俺は団員達へとそれを強いていたのだ。何て無様なんだろうな…俺は…。
「先生、始めましょう。」
俺にそう言ったのは、他でもない田邊だった。彼がこういうのを一番嫌ってるのにな…。
「ああ、そうしよう。」
俺は今ひととき、自らの罪悪感を切り離してそう言い、そのまま団員達の前に立った。すると、皆は一斉に楽器を構え、俺の合図を待ったのだった。
音楽…これが俺達の武器であり、そして…神への祈りそのものなのだ。いかなる攻撃にも負けない。いや…どんな悪にも屈しないものなのだ。
俺は一呼吸置くと、そのまま勢い良く腕を振り下ろした。すると、目の前から高らかなトランペットと華麗な合奏が響いた。その音に、聖堂で乱れ惑っていた人々の動きが止まった。それどころか、動く屍となった叔父の友人さえ動きを止めたのだった。
この音楽"復活祭オラトリオ"とは、初稿は貴族のために書いた世俗的なカンタータだった。それをバッハ自身が教会用のカンタータに打ち直し、その後の改訂時にオラトリオの名を冠した。現在演奏される稿は改訂時のもので、教会カンタータ稿には現在のものに小さな4声コラールが付随していた。今演奏しているのは、無論オラトリオ稿で、コラールではなく晴れやかな自由
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