case.6 「闇からの呼び声」
V 12.10.PM8:50
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けなのだろうか?
そもそもアウグスト伯父が話したように、ルシファーとは"輝ける者"や"光を纏う者"という意味のラテン語が語源となっているが、元は形容詞だった。元来、これは名詞ではないのだ。ただ、見たままを形容したに過ぎない言葉なのだ。
「ルシファー…裏切りの象徴でもあるからなぁ…。そうか…裏切りなんだ…!」
「京、何か掴めたのか?」
「まぁ…掴めたと言うよりは、単に思い当たったというだけだけどな。要は、誰かが誰かを裏切った…そう言うことだと思うんだ。」
父に問われて俺がそう答えると、アウグスト伯父が腕を組んで言った。
「そうか…だからわしはそう思うたんか。これはわしの推測じゃが、ヴェッベルグ伯が亡くなった時、恐らく執事じゃったエルネスティは解雇されたんじゃろう。」
「何故そうだと思えるんですか?」
「それはな、伯爵の領地が他の者に渡ったからじゃ。無論、領地を治めるのは貴族じゃから、その貴族には既に執事がおって当たり前じゃしな。エルネスティの居場所は無ぅなってしもうたと考えて不思議はあるまい。とすれば、住み慣れた町でさえ居づらくなったんじゃなかろうかのぅ。」
アウグスト伯父の推測は尤もだ。主人が亡くなった後、館から追われるように出なくてはならなかったエルネスティを、町の人々は哀れに思えど、恐らくは手を差し伸べることは出来なかっただろう。様々な噂の飛び交う町で、エルネスティは悲嘆に暮れたに違いない…。
だが、このヴェッベルグ伯に仕えたエルネスティと、貴族の末裔とされている殺人鬼となったエルネスティがどう繋がっているかは解らない。
ただ、二人共<裏切り>という行為により、その人生が狂わされたことが共通点と言える。片や執事で片や貴族の末裔とは…少しかけ離れているように思う。
「この件は二人のエルネスティを含め、再度調査してきます。アウグスト様、それで宜しいでしょうか?」
俺が頭で話を整理していると、メスターラー氏がアウグスト伯父にそう言った。伯父は「済まぬが、早々に頼む。」と言って、再びグラスに口をつけたのだった。
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