暁 〜小説投稿サイト〜
藤崎京之介怪異譚
case.6 「闇からの呼び声」
V 12.10.PM8:50
[4/5]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話
りを恐れ、遺品を使って墓を作ったそうじゃが…ま、墓というもんで禍を封じたかったんじゃろう。」
 なんだ…これは?伝承自体が二重三重に絡まってるじゃないか…。伝承に第三者が私意的に介入しているとしか思えないし、まるで犠牲者を増やすよう仕向けているみたいだ…。
 これは教会だけじゃない…政治にすら直接影響を及ぼすような…そんな大きなものになっている。 何故そんなことを?そもそも…何でこんな回りくどいことをしているのだ?そんな必要がどこにあったというのだろう?俺には目的がさっぱり解らない。
 いや…最初から目的なんて必要ないのかも知れない。悪魔の仕業ならば、人間を神から逸脱させれば良いのだし、最終的には自分を崇めさせれば良いのだからな。
 だが…こんな手の込んだことをして、これといった成果はない様に思える。 確かに強大な力は誇示できようが、それにひれ伏した者はいないからだ。しかしそれとは真逆に、その強大な力に抗おうとした者はいるのだ。
 信仰心を奪うためなら、そんな強大な力を見せ付ける必要性はないだろう。そんなことをすれば、逆に神の存在を明らかにしてしまうのだから…。悪魔…サタンだったら、もっと狡猾に事を推し進める筈だ。
「京、どうかしたか?」
 俺が考え込んでいると、不意に父が話し掛けてきた。
「いや…ただ、悪魔の仕業だとしたら、少し腑に落ちないと思っただけだ。信仰心を折って神への愛を消すためだったら、こんな解りやすいことをわざわざするか?サタンの狡猾さは、聖書でも言及されている。何故…こんな神を証明するかのようなことを…」
「ルシファーじゃ。」
 俺が父へと話しているのを聞き、アウグスト伯父がそう言った。
「ルシファーって…。」
 俺は怪訝に思って言った。まさか、ここでそんな言葉が出てくるとは思ってもなかったからだ。たが、アウグスト伯父は俺の困惑をよそに、後へと話しを進めた。
「元来、これは名ではない。バビロン崩壊の情景を描写した言葉じゃ。ルシフェルやルシフェエル等とも書かれるが、別にサタン…神を謗る者の名ではない。じゃが、この言葉に答えがあるように感じるんじゃ。」
 アウグスト伯父はそう言うと、グラスへと口をつけた。
 確か…バビロン崩壊だけでなく、イエス生誕の時にも同じ事柄があった。それは暁の星…いわゆる"金星"の出現だ。これは"明けの明星"とも呼ばれる。
 金星は春と秋、共に朝方と夕方に見ることが出来る。ここから朝方に見えるのを"明けの明星"、夕方に見えるのを"宵の明星"と名付けられたのだ。
 東西の神話の中には、その美しさ故に女神の名を冠している場所もあるが、その輝きが一等星の実に170倍という明るさだからだろう。金星そのものは地球とほぼ同じ大きさで、時には姉妹星とさえ呼ばれる。それが何か因縁めいていると思うのは…俺だ
[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ