case.6 「闇からの呼び声」
U 12.6.PM1:44
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るとは。もう少し早くに会わせるつもりではあったが…。」
何だか暢気だなぁ…。俺はあれこれ大変だっていうのに…。
「それで、何で父さんが?」
「京之介…そんな邪険にしないでくれ。これでも精一杯仕事をこなして休暇を取って来たんだから。」
「はぁ!?休暇って…これからが書き入れ時だろ?」
「いやぁ、義兄さんに連絡もらってな。これは一大事と…」
「そうじゃなく、父さんの仕事に影響するだろ!?それでも名の知れた指揮者兼ピアニストなんだから、年末年始に稼がなくていつ稼ぐってんだよ!」
そう…父は世界的な指揮者でありピアニストなのだ…。
藤崎征一郎…若いころはピアニストとして活躍し、シューベルトのピアノ・ソナタとショパンのエチュード集で一躍有名になった。
母アンナと結婚してからは指揮者に転向し、今ではブラームスとマーラーを得意としている。最近ではモーツァルトとショパンのピアノ協奏曲をフォルテピアノで指揮振りして喝采を浴びたんだが…。
「京之介の言うことは尤もなんだが、息子の一大事に駆け付けない親などいないぞ?」
「俺のどこをどうやったら一大事なんだ…?俺はこの通りピンピンしてるが?」
「いや、これから一大事になるかも知れんからな。あの山桜事件や歩道橋の時だって…」
「もういい…来てくれてありがとな…。」
こういう親だ…。ま、本当に心配じゃなきゃ、世界的なオーケストラの常任指揮者がわざわざ休暇取ってまで来てくれはしない。副指揮者のアーベル氏には気の毒だが…。きっと今頃は慌ただしく走り回ってることだろう。
「で、父さん?この後、オケはアーベル氏が?」
「ん?いや、数人の指揮者仲間に頼んであるから、アーベル君は数回指揮すれば大丈夫だ。ま、ベートーヴェンは全てアーベル君だから、彼も喜んで引き受けてくれたがね。彼はベートーヴェン大好きだからねぇ。」
俺と父がそう話していると、叔父が苦笑しつつ会話を止めに入った。
「二人共、もうその辺で良いかな?こんな場所で長話もなんだし、場所を移そう。茶でも飲みながらゆっくり話せば良いからな。」
そう言われ、俺達は宣仁叔父の部屋へと場所を変えることにした。
叔父の部屋へと行く途中、俺はなぜ叔父を探していたかに気付いて慌てて口を開いた。
「叔父様。申し訳ないのですが、ブロックフレーテとトラヴェルソの演奏家に心当たりはありませんか?団員の一人が腱鞘炎で、急遽探さなくてはならないもので。」
「そうか、それで私を探していたというわけか。そうだなぁ…近くの小さな楽団に一人いたはずだ。今晩にでも話してくるから、心配することはない。お前は仕事だけ考えていればいい。ま、二つもあるがな。」
演奏と…あっちの仕事ね…。ま、そのお陰で団員全員が食いっぱぐれずに済むんだから、文句なんて言えない。日本で普通にや
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