case.6 「闇からの呼び声」
U 12.6.PM1:44
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立っとたんでな、不憫に思うて、財布はくれてやったと言ったんじゃよ。その時の警官の気まずそうな表情といったらなかったのぅ。」
アウグスト伯父はそう言うと豪快に笑った。
「まさか…その小僧って言うのが…。」
「それがフリッツとの出会いじゃよ。奴はその後改心し、自身の能力と経験を生かして探偵となったんじゃ。無論、大学も出ておる。」
いやぁ…大学出てまで探偵にならんでもなぁ…。ま、相模もそうなんだが、一応は警察へ入ってから探偵になったからな。こちらは一直線に探偵…。改心が良いんだか悪いんだか…。
「しかし伯父様。フリッツ氏は、数百年も前の事柄なんて調査出来るんでしょうか?」
「問題無い。大学では歴史に古文学、それに古美術なども学んでおったし、ラテン語やアラム語、ギリシア語などの聖書に関連した語学も学んでおった。今では探偵業と平行し、時折大学でも教えとるよ。」
俺は呆気にとられた。探偵をやっている教授…なんて、今まで聞いたこともない。まぁ、それだけ能力が高いのだろうが…。
「で、どうするんじゃ?」
「そうですね…。では、今夜の夕食に誘って頂けますか?急で申し訳ないのですが…。」
「大丈夫じゃろう。食堂に8時で良いかの?」
「はい。お願いします。」
俺がそう言うと、伯父は直ぐ様部屋を後にした。恐らく連絡を付けに行ったんだろう。
アウグスト伯父が部屋を出ていった後、俺の後ろから田邊の唸るような声が響き、俺はギョッとして振り返ると…半眼の田邊が言ってきた。
「先生…。待降節とクリスマスの演奏練習、どうするつもりなんですか!?クリスマスは25日から27日まで三日立て続けで、年末にも演奏会、新年も一日目から演奏があるんですよ?」
「分かってるよ。」
「分かってません!バッハのクリスマス・オラトリオ全六部、マニフィカト変ホ長調、サンクトゥス、カンタータ第110と65番、町のホールではヘンデルのメサイアにシャルパンティエの真夜中のミサとテ・デウム…。殆んど演奏したものばかりとはいえ、これだけのものをこんな短期間でやるには、もう練習に入ってないと困ります。このままでは…」
「分かったから!全く…明日からマニフィカトの練習に入るから。初稿の変ホ長調は初めてだしな。二日パートに当てて、後一日で仕上げる。他のは各二日あれば間に合うだろ?クリスマス・オラトリオとメサイアは四日必要としても…」
「その二つも二日で上げて下さい。そうしないと、年末のオルガン演奏会に支障が出ます。」
「…そうだったな…。聖マタイ教会でやるんだった…。」
俺がそう呟くと、田邊は凄い勢いで睨み付けて言った。
「何でもかんでも安請け合いするからこうなるんです!そもそも先生は…」
あぁ…始まった。こうなると長いんだよなぁ。ま、俺が悪いんだけど。でも、田邊って何だか心
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