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藤崎京之介怪異譚
case.6 「闇からの呼び声」
T 12.5.AM8:11
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って性欲はあるが、金を払ってまで得たいものじゃない。娼婦も好きでやっている訳じゃないだろうが、国がしっかりとした基盤の上に知識や教養を貧しい人々にも与えられたなら、こういう人々も別の生き方が出来たはずだし出来るはずだ…。まぁ、それは俺の傲慢さからくる考え方かも知れないが…。
 俺がそう考えていた時、宣仁叔父は俺の肩に手を置いて言った。
「皆が皆そうではない。確かに、この話だけ聞けば不幸かも知れんが、シンクレア神父は五十年この教会…いや、神に仕えてきた。自らの出生はどうでも良いのだ。彼自身人々を愛し、人々もまた彼を慕っていたのだからな。それは幸せなことじゃないか?」
「…そうですが…。でも…」
「お前の言いたいことは分かる。だが、ここでは仕事が優先だ。先ずは調べるとしようじゃないか。」
「…分かりました…。」
 宣仁叔父と俺がそう言ってドミニク神父に向き直った時、プフォルツ氏が怪訝な顔をして言った。
「調べるって…この事件をですか?」
 その問いに苦笑いし、宣仁叔父がプフォルツ氏へと言った。無論、本当のことなど話せはしないが…。
「いや、事件には関係ありませんよ。以前からドミニク神父に、教会をどう修繕するかの助言を求められていたのです。やっと手が空いたので、今日はその件で参ったのです。」
「そうだったのですか。ですが、こんなことがあったんですから、程々にして頂きたい。捜査が終わった訳ではないのでね。」
「分かっております。」
 横で会話を聞いているドミニク神父は、キョトンと目を丸くしていた。が、暫くして「そうでしたね。」と言い、プフォルツ氏に挨拶して俺達を奥へと促したのだった。
 俺達はドミニク神父の案内で、奥にある小さな部屋へと入った。ここへ来るまでに数人のシスターに会ったが、皆それぞれ硬い表情をしていた…。ま、こんな事件があって警察が来てるのだから、それは仕方ないと言える。
 案内された部屋には、小さいながらテーブルも椅子もあり、雰囲気的には会議室といった感じだ。
「お掛け下さい。今、お茶をお持ちしますので。」
 ドミニク神父はそう言うと、部屋の奥へ続く扉を開いて中へと入って行ったのだった。
「叔父様…。この件、どう考えてますか?」
「そうだなぁ…。まぁ、詳しく調べてみなくては何とも言えないが、強い力が働いている可能性は高い。ドミニク神父がわざわざ我らを呼び寄せたのも、そう考えたからだろうしな。」
「…そうすると、シンクレア神父は…。」
「もう生きてはいまい。」
 その後、俺達は黙したままドミニク神父が戻るのを待った。
 もし、シンクレア神父が亡くなっているのであれば、ドミニク神父の願い通りというわけにはいかない。
 ただ、シンクレア神父の亡骸は見つけ出さなくてはならないが…あまり期待を持たせるのも酷と言うもの
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