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藤崎京之介怪異譚
case.6 「闇からの呼び声」
T 12.5.AM8:11
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はドミニクと申します。この聖アンデレ教会で神父として奉仕させて頂いております。この様な騒ぎにお呼び立てしてしまい、大変申し訳ありません。」
 ドミニク神父がそう言った時、先程彼と話していた警官らしき人物が近付いてきて言った。
「君…この間、聖マタイ教会でオルガン・コンサートをしたオルガニストでは?」
 いきなりそう言われたため、俺は目を点にしてしまった。
「はぁ…そうですが…。」
「やはりそうでしたか。そのコンサートには友人の誘いで行ったのですが、バッハの異稿ばかり集めるとは考えましたなぁ。」
 この警官らしき人物…ここへ何をしに来たんだ?こんな世間話をしに来たんじゃないはずだが…。
「いえ…あれは牧師の提案なんですよ。」
「ほぅ、それでですか。しかし、ハ短調のプレリュードとフーガの異稿がニ短調であったとは驚きました。二度上がるだけで、随分と明るく響くものですなぁ。」
 もしかしたらこの人…意外とマニア?いやいや、こんな話をしている場合じゃないな。叔父達も半ば呆れ顔だし…。
「で、事件のことなんですが、何か掴めているんですか?」
「あぁ…それですか。正直申し上げ、あまり芳しくありませんな。」
「地下はどうなんですか?」
「それが大きな問題でして…。ワイン倉庫も地下墓地にも、全く何もみつからんのです。見付かったのは神父の使っていたロザリオだけでしてなぁ…。」
「それはどこで?」
「ハインリヒ・フォン・ヴェッベルグと言う人物の墓の前です。」
 俺…一応は一般市民なんだが…こんなにペラペラと話してしまって良いんだろうか?いや、こっちには都合が良いんだが…。
「その人物って…あの民衆に殺されたという…。」
「そうですね。まぁ、伝承では…ということですがね。」
 ハインリヒ=フォン・ヴェッベルグというのは、数百年前に実在した伯爵だ。とある古文書には善良な執政をしていたとあるが、別の古文書には晩年に悪政を強いたとある。
 この伯爵は元来、慈愛を持った優しい方だったそうだが、妻と一人息子を相次いで亡くしたため、神経を病んでいったそうだ。そのためか、晩年には悪魔崇拝に走って執政を疎かにしたばかりか、民から多くの税を徴収してそれを無造作に使っていたとか。それでも民は耐えていたそうだ。優しい慈愛に満ちた伯爵を知っていたから。
 だがある時、民の娘が伯爵の手によって悪魔の生け贄にされた。それを知った民はさすがに赦すことは出来ず、遂に暴動が起こったのだ。その年は凶作だったこともあり、民たちの怒りは頂点に達していたのだろう。そして…伯爵は殺されたのだ。
 この伯爵の殺され方も恐ろしく、古文書によれば、伯爵を館から引きずり出した後に館は焼かれ、その燃え盛る館の前で伯爵は四肢を斧で切断された。無論、首は一番最後に…。それでも飽き足らず、民たちは
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