case.6 「闇からの呼び声」
0 11.30.PM.6:56〜 prologue〜
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ドイツの田舎町に来てから、早三ヶ月が過ぎた。
宣仁叔父の誘いで来たこの小さな町は、中世の名残を数多く残していて、現代に旧き善き時代を垣間見せてくれる。まぁ、普通に車は走るし新しい店もあるが。
俺はこの日、アウグスト伯父からの依頼で、隣町にある聖マタイ教会へと足を運んでいた。プロテスタントだが、ここのルートヴィヒ牧師はアウグスト伯父とは旧知の仲で、是非教会でオルガン演奏をしてほしいと言われたそうだ。
「ルートヴィヒ牧師。こちらはもう大丈夫ですから、貴方も席へ。」
「では、そう致しましょうか。貴方の腕はあのアウグストが絶賛する程ですから、私も楽しみです。」
「…そうプレッシャーをかけないで頂きたいですね…。」
俺がそう言うと、ルートヴィヒ牧師は微笑みながら部屋を出ていった。
この聖マタイ教会には、バッハもその才能を認めていたジルバーマン製のオルガンが備えられている。ごく最近まで修復が成されていたが、先日それが完了したのだ。伯父曰く、「この町で最も優れたオルガン」だそうだ。その響きは澄んでいて淀みなく、低音のペダル鍵盤も申し分無いと言っていた。
俺が演奏台に立つと、下から拍手が湧き起こった。下…と言うのは他でもなく、オルガンの演奏台がかなり高い位置にあるからだ。俺は下のお客に会釈をし、鍵盤の前に座った。
最初に演奏したのは、やはりバッハだ。コラール編曲“バビロン川のほとりで"。このコラール編曲は、バッハが晩年に若き日に書いたものに手を入れて編纂した“ライプツィヒ・コラール"に含まれるが、他に二つの異稿が存在する。俺は滅多に演奏されないBWV.653aという番号を与えられている稿で演奏したが…これが意外と評判が良かった。
しかし…なぜ異稿なのか…?それは、この演奏会のタイトルが「バッハ オルガン作品の異稿を聴く」だからだ。これはルートヴィヒ牧師の意向で、まぁ…彼の趣味なんだろう。だが物珍しさも手伝ってか、教会は満席になっていたのだった。
俺はそのオルガンで十数曲演奏した。最後には盛大な拍手が湧き起こり、教会内にこだました。その中で、俺はこのオルガンをもっと演奏したいと感じていた。だが…俺はドイツへ演奏旅行をしに来た訳じゃないんだ。
そう…別の目的のために呼び寄せられたのだ。
“ 悪魔払い ”
この三ヶ月でも、俺は宣仁叔父と共に八件の悪魔払いをしていた。そう容易い仕事ではなかったが、大した怪我もなく済んでいる。
こちらでは宣仁叔父と天宮氏により、衣食住の心配をしなくても良い上、演奏の依頼も頻繁に来ていた。最初はアウグスト伯父の都合が付かないとき細々と聖堂のオルガニストとして演奏したり、町の劇場で管弦楽曲をやったりしていた。だが、その積み重ねが幅広い人脈を作り、アウグスト伯父や宣仁叔父の名前も手伝って
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