Vivid編
第四話〜向き合うということ〜
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が悪い。君が蔑ろにしている自分自身を大切にしている他人がいることを理解…………いや、理解はしているか……受け入れるべきだ」
ゼストの言葉はライの内面を抉ると同時に染み込んでいく。
理解も納得もできる。だが、ライはそれ以外の方法を選択できない。
自分も他人も傷つける覚悟。
言葉にすればそれは強さと戒めを示すかもしれない。だが、ライの場合はそれと同時に違う意味合いを含んでしまう。
他人を傷つけるから自分も傷つけようとする。
罪に対する罰。自己満足の代償行為。
要するにライは他人を踏みつけにする幸せを受け入れることができないのだ。かつての枢木スザクがそうであったように。
「自分を許せとも、忘れろとも私にも言うことはできん。だが、罪の意識だけで生きていくのはそれこそ死人と変わらん。かつての私のようにな」
「…………」
喉が干上がったように痛みと乾きを訴えてくる。ライはゼストの言葉に何も返すことができない。ただ沈黙を貫くことしかできない。
「……喋りすぎたな、今日はもう行きなさい」
「……失礼します」
ライにとってそう返すのが今の精一杯であった。
「…………ぅっ」
廊下に出ると喉にせり上がってくるモノを感じ、ライは即座に近場のトイレに駆け込んだ。個室に入り、後ろ手に鍵をかけると便器の蓋を開ける。
「――――――――」
膝をおるようにして顔を便器に近づけると、ライは全てを吐き出した。
過去を掘り返し、これまでの覚悟を全て否定されたような感覚。足場が崩れ、空宙に放り出されたような浮遊感。
それがどこまでも不快で、怖くて、寂しくて、痛い。
ゼストは言った。『受け入れろ』と。皇暦の世界でもこの世界でも、ライにとっては諦めていたモノを諦めるなという戒めの言葉。
だが、それはライにとっては呪いのようなものだ。
どれだけ他人がライを受け入れようと、どれだけライ自身がそれを望もうと、誰でもないライ自身がそれを否定してしまう。
犠牲がないように事を成そうにも、どうしても取りこぼすように諦めるべき何かが生み出てしまう。
咄嗟にしろ、考え抜くにしろ、その場合ライは自身をまず切り捨てる。
何故ならそれこそがライの起源であり、全てだから。
幼い頃から家族を守るために自身を差し出してきた。
国を守るために、王であるために個というものを封じてきた。
友達を助けるために自身以上に他人を気にかけ、手を伸ばした。
そして、自らが望む世界の為に生命を失う決断も下せてしまえる。
それはしかし、ライが愚かであるからではない。単純に彼がまだ『子供』だからだ。幼い頃、まだ遊びたい盛りの頃から武力による権力抗争が当たり前だった時代で、王族として生きていくために、文字
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