Vivid編
第四話〜向き合うということ〜
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「ええ、あと一時間もしないうちにここを出ます…………お互い厄介な立場にいる」
ポツリと煩わしそうにライは言葉を零した。
改めて明確にすると、今の時点でライの立場はかなり微妙な位置に存在している。
当時は次元漂流者であり民間人であったライは、事件に関わると熟練魔導師顔負けの戦果を挙げ、JS事件の実行犯と面識があり、更には聖王を打倒するだけの力を示した青年。
これら全てを把握しているのはごくひと握り――――実行犯とは面識どころか懇意にしている節もあったのだが――――であり、そのひと握りの人物たちもそれらを正確に把握しているかと言われればできていないと思われる。
これだけの事をたった半年もしないうちに起こしてしまったライは、今でこそ多少は落ち着いているとは言え、管理局などの組織内では一廉の人物として認識されている。
その為、ライが誰かと接触すると誰かしらが邪推を始めてしまうのだ。
また、彼が何かを始めようとしているのではないか?
今は味方であるが、それもいつまで続くのか?
人脈を作るのは力を貯めるためではないか?
と言った、あげ始めればキリのない憶測が噂となり、尾ひれを付けどこまでも疑念を生み出す。
もちろん、そう言ったことに対処する方法はあるが、未だミッドチルダという社会基盤に対して干渉する方法が一般人と同じ程度しか持っていない今のライでは、そう言った方法がどうしても後ろ暗いことになりそうなため、ある程度自省をしていた。
とにもかくにも、ライがJS事件のゆりかごでの防衛戦に置いて共に行動していたゼストと堂々と会うにはライにもゼストにもお互いにうまい話ではなかった。
退院の為、たった数十分だけできたライが自由に動いても大丈夫な時間。それがゼストと面会できる貴重な時間であった。
「これからどうする?」
漠然とした問い掛け。
その意味を察することができないほど、ライは恩知らずではないし、彼に対しての誠意を持っていないわけではない。
だが、ここでそれを正直に言ってしまえるほど、今のライが抱えているものは小さいものではなく、下手に口にしていい内容でもなかった。
「しばらくは、社会復帰の為に頑張ります」
これが今のライに言える精一杯。
そのライの返答をどううけとったのか、ゼストは苦笑を漏らした。
「正直者だな、君は」
「…………」
「だが――――」
先程まで緩んでいた口を引き締め、昔と変わらない鋭い眼光をゼストはライに向けなおす。
「それは長所であり、短所だ。君のとる選択肢は確かに最善であるかもしれないが、それは自身を一番蔑ろにする方法となっている」
「……」
「それについて自覚と覚悟、そしてそれを成す力を持っている分、君の場合タチ
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