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無人列車
2部分:第二章

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第二章

「ですから」
「酒もないか」
「過労でも毎日見るのもないな」
「そうですよね。だったら」
「あれしかないな」
 浩成も真剣な顔で返す。
「もうな」
「若村さんもそう思いますか」
「ただしだ」
 浩成はここでまた言ってきた。
「俺は自分で見たものでないと信じない」
「ええ、そうですよね」
 彼のそうした考えは知っていた。そうした人間なのだ。
「それじゃあ」
「一緒にですか」
「見させてもらう」
 実際にそうするというのだった。
「終電だな」
「はい、終電です」
「わかった」
 また答える浩成だった。
「それならだ」
「それはわかりました。けれど」
「俺の部屋か」
「若村さんって家俺のところと逆ですよね」
 それを言ったのである。
「確か」
「そうだが何とでもなる」
 しかし彼の言葉は安心しているものだった。
「それはな」
「っていうと俺の部屋にですか」
「そうだ。駄目だったらカプセルホテルにでも入る」
 そうするというのである。
「それでもだ。見てみよう」
「ええ、じゃあ御願いします」
 こうしてだった。二人でその最終電車に乗ることになった。この日も多忙でやはり終電に帰ることになった。今度は二人にとっては丁度よかった。
 しかしであった。電車を待つホームでだ。二人は並んで立ちホームの灯りの他は真っ暗なその世界でだ。二人で話すのだった。
「しかしな」
「そうですよね」
「うちの病院はおかしい」
 浩成は顔を顰めさせながら隆之に話した。隆之もそれに応える。
「幾ら何でも忙し過ぎる」
「ええ、全くです」
「人が足りてない訳じゃないのにだ」
 それでもなのだった。
「それでもこんなに忙しいのはな」
「何でなんですかね」
「患者入れ過ぎじゃないのか?」
 浩成はそれではないかというのだ。
「遠い場所からも随分来てるだろ」
「ええ、確かに」
「幾ら大学病院でも限度がある」
 浩成はさらに話した。
「多過ぎる。患者がな」
「そして研究報告も義務付けられていますし」
「そっちもかなり多いしな」
「それで毎日終電ですからね」
「院長が替わってからだな」
 浩成はまた言った。
「そうなったのは」
「それまで普通でしたよね」
「まだな」
 彼は後輩の言葉に応えた。横に並ぶと隆之の方が大きい。

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