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無人列車
1部分:第一章
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ではなかった。何しろ小さな子供までいるのだ。有り得なかった。
「疲れてるのか?」
 このことを真剣に思った。
「過労か、やっぱりな」
 最初はそう思った。しかしであった。
 次の日も終電でその次の日もだ。彼は毎日それを見たのだ。
 あまりにも毎日見るのでだった。職場の先輩に話した。若村浩成という。浅黒い肌に細い切れ長の目をした痩せた男である。顔付きも痩せて鋭く見える。髪は黒でそれを左右に分けている。背は隆之程高くはないがそれでも一八〇ある。
 彼もまた医者である。その彼に話したのだ。
「終電に出る?」
「そうなんですよ」
 職場で話をする。やはり今日もコンビニ弁当だ。これは隆之も浩成も同じだ。違うのは隆之が鮭弁当で浩成はハンバーグ弁当だ。それだけの違いしかない。休憩室で二人で食べている。
「最初は疲れかって思ったんですけれどね」
「ここんとこ忙し過ぎるからな」
「ええ、それでもですよ」
 また言う隆之だった。
「普通毎日そんなの見ませんよね」
「普通はな。薬でもやってないとな」
「それはしていないですから」
「なら有り得ないな」
「ええ、それどころか最近飲む暇もないですから」
 連日朝早くから終電まで仕事だ。それで飲める筈もなかった。

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