七節・始まりの最上階……その最奥を目指す
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えられる程。
即ち交渉を断られた以上、キバオウは潤沢な金銭をフルに使って『全身をコーディネート』するのが正しい選択で、リーダーどころかトッププレイヤーに相応しい『重厚かつ迫力ある』装備品を纏っているのが正しい姿なのだ。
また反ベータテスターを掲げているのなら、自分の発言力を高める事を視野に入れればならず、尚更に新調強化の類は必須となってくる。
……だが――――彼の装備は以前と『何も変わらない』スケイルメイルで、剣すらアニールブレード等のレア品ではなくまた『何も変わらぬ』ワンハンドソード。
グレード自体はそこまで悪くもないが、同時に極めて特別でも無く、グレードの高い武器に防具を拵える時間もコルも昨日まで充分あった。
現にアスナの細い剣はより威力の高い【ウィンドフルーレ】に変えて、しかも幾回か強化まで施している。
グザの右肩越しに掛けられている鉄板付きの布も、朝一番で新調してきたか見慣れない物に変更されている。
此処まで言えば分かるだろう…………キバオウの姿には金銭面でも信条面でも、明らかな矛盾が生じているのだ。
(……何故だ……?)
大金だからと温存していることを理由に挙げるにしても、此処で死んでは金を使うもクソも無い。デスゲームだからこそ命をよりガッチリと守るべく、しょうもない所でケチっている場合ではない。
ならば? ―――そう考えかけたキリトの思考は、ディアベルの声で中断させられた。
「みんな、集まってるよな―――――ほんと唐突だけど、ありがとう!」
確かに唐突にも程がある感謝だが、次に続く言葉で誰もが疑問を霧散させる。
「今この場にレイドメンバー全五十五人が、欠ける事無く集まった! 人数上限には少し足りないけど……でも文字通り命が掛っているこの戦いに、誰も脱落する事無く集まった事、俺はとっても嬉しいんだ! ホントにありがとう!!」
ディアベルが右手を突き出せば、それの同調し右手を突き出す物が大多数、混じって口笛や笑い声を飛ばす物も少なからずおり、ディアベルの持つリーダーシップの高さを改めて感じる。
そんな盛り上がる中で……キリトやアスナ、彼等の後方に居るスキンヘッドな黒人プレイヤーとそのパーティーは、険しい顔で気を引き締めているように見えた。
緊張も大きければ恐怖へ変わるが、楽観も度が過ぎれば油断へと変貌する。
それを危惧しているから、周りに交じらず自身のペースを貫いているのだと見えた。
「ふぅ〜っ……ヒハハ……」
……グザは相変わらずヘラヘラ笑い、悪い意味で己のペースを崩してはいなかったが。
というか未だあの青いパイプを吸っていた。
そんな空気の離反した傾奇者に気が付く事
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