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大刃少女と禍風の槍
七節・始まりの最上階……その最奥を目指す
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何にか思い出さない様にすべくか、少し険しい顔つきで先の思案の続きを始めた。

 もし仮に今日のボス戦クリアーが無残な結果に終わった場合、士気の状況によっては部隊の再編成も叶わないし、レベルと経験値取得効率の関係上、第一層ではもうレベル上げなど不可能に近い。

 されども余程の事が無い限り、連携を乱しさえしなければ死者0での切り抜けも、実は希望的目標でないともキリトは考えている。
 何せキリトはβテスター。コボルド・ロードの嘗てのレベルや戦闘状況は充分に熟知しており、加えて集まったプレイヤー達のレベルや装備グレードならば、寧ろベータテストよりも楽に戦えるのでは? とすら思ってもいる。

 勿論……命が掛っているが故の、予想外に値する事態が起きないとも限らない。


(いや、頭に置いておくべきはそこじゃないな)


 ……が、マイナス方面に例えてばかりでは埒が明かない。その言葉が脳裏に浮かんだか、一度首を振って前を見る。
 キリトの眉間に刻まれた皺は、気合を入れ直した為か既に取れていた。


「…………ふぅ」
「ヒヒハハハ……フゥ〜」


 と、彼の左前と右後ろでほぼ同時に息を吐く声が聞こえ、まずは前方のアスナへ視線を合わせた。

 フードに隠蔽され全てを拝見する事など出来ないが、怜悧な光を持つ相貌には、見つめた相手へ儚さと鋭さを同時に伝えてくる。
 その佇まいは攻略広場と迷宮区、宿で見た物と寸分も変わらない。
 己の方が血気に早っている様だとも、キリトに感じさせていた。

 続いて後ろに傾け移動させ、グザの方へと目を向ける。
 息を吐く前に笑っていた事から思い設けてはいたか、彼の顔に映る薄笑に対してキリトは肩を若干落とすだけだった。息を吐いたのも、パイプから吸った煙を出す為だったのだから。
 此方も此方で迷宮区や早朝の有様と全く変化が見られず、気負っている所作を微塵も見せはしない。


(全く……)


 お前はもう少しぐらい緊張しろよ……と、キリトがそう言いたげな半眼になった。


「おい」


 そして若干ながらしかし確かな嫌悪感の混じる、三人目の声がキリトの背後から聞こえ―――


(は? いや、三人目なんて居ない筈だぞ?)


 つい二人と同じ表情で振り向こうとして、その声が聞覚えこそありながらも、自分達のパーティーには其処まで関係が無い人物だと思いあたる。

 表情を正して、改めて第三者の顔を拝んでみれば……第一回目の攻略会議で、ベータテスター排斥の意味と取れなくもない台詞を吐き、一時グザによって諌められた “キバオウ” の姿があった。

「分かっとるやろけどな、今日はジブンら後方へ引っ込んどれよ。飽くまでワイらのサポ役なんやからな」
「……」

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