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第一章
左道の末
この時織田信長は彼にとっては実に奇妙な話を聞いていた。話しているのは千利休である。彼が茶室において茶を淹れるながら話をしてきたのである。
その話を聞いてだ。信長はまず言った。
「面妖な話じゃな」
「そう思われますか」
「思わないと言えば嘘になる」
こう利休に返す。丁度彼が茶を淹れているそれを見ながら言ったのだ。
「それはのう」
「しかし実際にそれを行う者がおります」
「蟲毒をか」
「はい」
一言で確かに答えた利休であった。茶室の中には二人しかいない。質素で入り口の小さいその部屋の中に二人でいる。こうした話にはもってこいの場所ではあった。
「それをです」
「してその蟲毒じゃが」
彼はそれについても問うた。
「どの様にしてはじめるのじゃ?」
「まずは様々な生き物を集めます」
利休はそれについても話した。
「そしてそれを一つの箱に入れるのです」
「生き物をか」
「蛇なり蛙なり虫なリ入れるものは様々です」
それは雑多だというのだ。
「集められるだけ毒を持ったものや禍々しいものを集めます」
「そして箱に入れてか」
「後は待つのです」
「待つというのか」
「はい、生き物達は中で互いに争います」
そうなるというのである。
「そして最後に生き残るのは一匹だけですが」
「その最後の一匹が問題なのじゃな」
「左様です。おわかりですか」
「話を聞いていればわかる」
信長は静かに答えた。勘の鋭い彼らしかった。
「その凄まじい争いを生き残った一匹はさぞかし強い呪いを持っているのじゃろうな」
「それを使うのです。そういうことです」
「やはりな。それが蟲毒というものか」
「そしてです」
利休はここで話の本題に入って来た。
「今その術を使う者がこの岐阜に潜り込んでおります」
「武田か?それとも朝倉か?」
すぐにこうした相手の名前を出してきた信長だった。
「どちらじゃ?」
「そこまではわかりませぬが」
「そうか。わしの命を狙ってきておるか」
「どうされますか?」
「捨て置け」
信長は静かにこう言うだけであった。
「わしの周りに結界でも何でも張っておればそれでよい」
「術を使う者には何もせぬのですか」
「そうじゃ。その者は捨て置け」
信長の言葉も考えも変わらなかった。
「よいな、それは」
「それはまたどうして」
利休はいぶかしむ顔で信長に問うた。主の苛烈な性格を知っているからこそ今の消極的な様子はいぶかしむに値するものであった。
しかもであった。信長はさらに言うのであった。
「して、じゃ」
「して、ですか」
「そうじゃ。これからのことじゃが」
話を変えてきたのだ。何とでもない
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