アインクラッド編
龍皇の遺産
龍皇の遺産 03
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い口調で否定した。 それは迷いのない即答だった。
「大丈夫ですよ、フォラスくん。 確かにフォラスくんは頭のネジがぶっ飛んでるですけど、私はそう言うフォラスくんも含めて愛しちゃっているのです。 もしもこの先、フォラスくんが人を殺したとしても、どんなことをしたとしても、私はそんなフォラスくんを変わらず愛し続けます」
「…………」
「それにですねー。 私の頭もネジがぶっ飛んでるですからお揃いなのですよ。 今はそれでいいじゃないですか」
そう言って笑うアマリの表情は、はにかむような照れ笑いだった。
文脈にそぐわない表情。 だけど、僕はそんなアマリに何度も救われ、そして今も救われる。
「難しく考えるのはフォラスくんの悪い癖ですよ? 頭空っぽにしていいのです。 ネジがぶっ飛んでてもいいのです。 私はフォラスくんが隣にいてくれるだけでいいと、本気で思ってるですよ」
「そっか……」
「フォラスくんは違うですか?」
「そうだね。 僕もそう思うよ、本当に。 アマリが隣にいてくれるだけでいい……。 うん、その通りだね」
考えることを放棄する。
アマリが僕の隣で笑ってくれる。 それだけで大抵のことはどうでもよくなるのだ。 我ながら単純だけど、結局はいつものように僕も笑った。
「さてと。 じゃあ、ヴェルンドさんに報告しよっか」
「はいですよー」
目の前にあるのはヴェルンドさんが開いてくれている道。
隣にいるアマリが、両手で持っていた大剣を肩に担いで手をこちらに伸ばす。 僕がその手を握ると、ぎゅっと握り返された。
「ありがとう」
アマリが持ってきた龍皇の大剣を渡した直後、ヴェルンドさんはとても嬉しそうにそう言った。
「これで奥方様も気が晴れるであろう。 重ねて礼を言う。 ありがとう、人間たちよ」
「お礼はいらないよ。 僕たちには僕たちの目的があったからね」
元々の予定とは大きくずれたけど、僕はヴェルンドさんに目的の鉱石を渡す。 クエストログの更新を知らせるメッセージを視界の端に収めながら、またも嬉しそうに表情を綻ばせるヴェルンドさんと目を合わせた。
「さて、謝礼の品だが……」
何を迷っているのかは知らないけど、一瞬だけ途切れた言葉の好きに僕は言う。
「その前にひとつ、ヴェルンドさんに言っておくことがあるんだ」
ひとつだけの心残り。
「僕たちは、あなたが慕う龍皇を殺した」
ずっと言おうと思ってことことだ。
黙っていることもできたけど、それはヴェルンドさんを騙しているようで嫌だった。 もしもこの言葉にヴェルンドさんが怒り、僕たちに復讐しようとしても、それでも言っておきたかった。
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