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八神家の養父切嗣
十三話:心の刃
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するものの体は動かない。
 せめて襲い来る衝撃に備えて身を固くするが―――

『Divine buster. Extension.』
「ディバイン・バスター!」

 長距離から放たれた桃色の砲撃により、触手はその体ごと掻き消されてしまう。
 見覚えのある魔力光にハッとして振り返ってみるとよくぞそこから撃てたと称賛したくなる距離から砲撃の構えを解くなのはの姿が見えた。
 今の攻撃であればそのまま自分を狙って落とすことなど容易かった。
 そうであるにも関わらずあの少女は自分を助けた。
 そのことに理解が及ばなくなりヴィータは思わず怒鳴ってしまう。

「おい! 何勝手なことしてんだよ! あんな奴、一人で楽勝だっての!」
「そう言われても、私はヴィータちゃんと戦いに来たんじゃないんだし」
「なのは、その調子で話せばきっと伝わるよ」
【いや、フェイトちゃんもその調子、とかじゃなくて捕まえてよ! 助けてどうするの?】

 少し恥ずかしそうに笑いながら近づくなのはとフェイト。
 モニターから覗くエイミィからすればチャンスを棒に振られたようなものなので思わず天然少女二人にツッコミを入れてしまう。
 その声に二人そろってそう言えばそうだった、という顔をするあたり彼女達の根の善良さが(うかが)える。
 
「ねえ、ヴィータちゃん。どうして闇の書の完成を目指すか教えてくれない? もしかしたら協力できることがあるかもしれないから……ね?」
「うるせー! 管理局の奴の話なんか聞けるか!」
「大丈夫、私は民間協力者だから」
「テスタロッサは管理局員だろうが!」
「ご、ごめんね、なのは。私が居たせいで……」

 自分が居たせいでなのはの説得が失敗してしまったと落ち込むフェイト。
 それを慌てて慰めるなのは。
 そんなコントのような気の抜けた光景に呆れながらヴィータは冷静に戦況を判断する。
 まず単純に二対一と数では不利だ。この様子だとザフィーラの方にも敵は行っているだろう。
 つまり一人で戦わなければならない。
 相手が弱ければどうという事もないのだが悔しいことに相手の実力は本物だ。
 完全に不利だと悟り無意識にグラーフアイゼンを固く握りしめる。

「ヴィータちゃん、私が勝ったらお話聞かせてね!」
「……テスタロッサは戦わねえのかよ?」
「私も……あなたの話を聞きたいから」

 胡散臭げにフェイトを見るが、ニコリと微笑み、さらになのはの横から一歩下がる。
 自分は本当に戦う気がなくなのはに任せるというのだ。
 やはり、この少女達と戦うと調子が狂うとヴィータは内心で溜息を吐く。
 一対一は望むところだ。しかし、この戦いに勝ったところで実りがない。
 
 一度蒐集した相手からはもう蒐集はできない。
 
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