十三話:心の刃
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あるはやてはそれを知らない。
つまり、闇の書には意思疎通を取る手段はないのだ。
それでも普段ならば念には念を入れて不用意な言葉は一切かけない。
それどころかただの機械としてしか見ていない。
だというのに、今日は魔が差したのか心の底に封じ込めたはずの感情が暴れ狂う。
重く低い声でただの機械を問いただしてしまう。
「……答えろ、闇の書。お前はなぜ―――ッ」
―――はやてを主に選んだ?
最後の最後でなんとかその言葉を呑み込み食い止める。
しかし、闇の書はその先の言葉が分かるかのように静かに浮遊し続ける。
しばらく重い沈黙が続いたがやがて切嗣が動き出す。
「……いや、なんでもない」
今日はやはり疲れているのだろう。機械相手に謝罪までしてしまうなんて。
後で二時間ほど睡眠をとるべきだ。そう判断して切嗣はその場から足早に離れていく。
まるで、気の迷いが生じ“犠牲の分別”ができなくなった自分から背を向けるように。
世界が滅びても娘には生きていて欲しいと願う、親の心から目を逸らすように。
娘の不幸が他人のものであればよかったと呪う、醜い希望から逃げるように。
ふらふらと揺れながら―――真っ直ぐに歩き去って行く。
その背中を闇の書の意思はどうすることもできずにただただ見つめるのだった。
すずかがはやての元に訪れた数日後、クロノとリンディはアースラの武装追加、アルカンシェルが整ったという知らせを受けて本局に赴いていた。
その結果司令部にはエイミィが残り指揮代行を務める事態になっていた。
当の本人は緊急事態などそうそう起こるものではない楽観視していたのだが……。
「なんで、こんなタイミングで敵が見つかるのよー!」
「エ、エイミィさん、落ち着いてください」
「結界を張れる局員の到着まで最速で45分……まずい、まずいよ」
敵が自分達の都合を知っているはずもなく見事に発見に成功したのだ。
画面に映し出されるヴィータとザフィーラ。しかもヴィータは闇の書を抱えている。
平時であれば喜び勇むところだが今回は最大戦力のクロノもいなければ司令塔であるリンディもいない。
要するに、トップが居ない状態で戦わなければならないのだ。
そして現在の指揮代行であるエイミィは戦闘指示などを出しながら己の職務をこなさなければならないのだ。少し泣きたい気分になって来るのも仕方がないだろう。
「クロノ君とは連絡が取れても本局からだと間に合うか微妙だし、リンディ提督も会議中みたいで繋がらないし……どうしよう」
二人が居さえすれば絶好の機会なのだ。しかし、二人が居ないことでそれが逃げてしまう。
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