六節・早朝の宿で少女は悩む
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にも成れる素振り……とはレイピアなので少し違うが、兎も角武器を扱っていた方が良いと考えたらしい。
扉に手を掛けてみれば対して苦戦する事も無く開き、アーガススタッフの拘りなのか外で畑を耕す農夫一家を窓越しに見ながら、音も立てずに階段をゆっくりと降りて行く。
気の早い事でアスナはもうレイピアに手を掛けており、表情も次の扉を潜ったら即座に抜刀、剣尖をきらめかせる気満々……と言った具合だ。
表情は暗雲が濃く掛かり、瞳はは鋭く刃の如し、充満する重いく空気を湛えたまま跳び欄手を掛け、片手で押しながら外への第一歩を踏み出した。
「そーら! やっほほーい!!」
「ま、の……なにゅ?」
そして素っ頓狂な声を出した。
今アスナの思考を狂わせかけた言葉を紡いだ、その張本人が大きめの『ロバ』にまたがって、何とまあ楽しそうに跳び跳ねていたからだ。
長い腕を引っ込め脚を極端に折り曲げている所為で、どことなく滑稽な光景にも見えてしまう。
まさか朝早く起きたのは、ロバに乗りたかったという理由からだろうか。ならどことなくでも何でもなく、普通に滑稽なだけである。
充満していた殺気にも近い闘志をすっかり削がれ、眉を引くつかせながらアスナはグザへとやけに小さく声をかけた。
「何……しているんですか……?」
「ん? ああ、起きたかい嬢ちゃん。見ての通りよ、ロバ乗りだわな」
「……何で、今ロバに乗っているんですか」
「決まっとろーがい、暇潰しやね」
お気楽な一言でアスナは額に手を当て、物理的にも精神的にも頭を抱えた。
確かに今日死んでしまう可能性が高いのだから、やりたい事を精一杯やると言うのも別段悪いことではない。
……無いのだが、だからと言って能天気にロバ乗りをかますなど、緊張感のきの字も無いどころか、思い浮かべる事すら放棄している。
アスナはこんなに早い時間に外へと出たのだし、真面目な時はしっかり真面目にやる人柄ぐらいは知っていた為、てっきり槍でも振るっていたのかと予想していたのだ。
だが実際はパンフレットにも載っていた “攻略に役に立たない趣味スキル” にも載っている、《騎乗》スキルを使ったロバ乗りで、オマケにそれは暇つぶしときた。
気が抜けるのが当たり前である。
「アナタはどうしてそう、そんなに笑顔で居られるの? 今日死ぬ可能性が高いのよ?」
「高いだけだわな。死ぬとは決まっとらんし」
「……死を受けれているとでも言うの?」
「いんや? 死にたくは無いやねぇ……今日とて生きて帰るつもりだわな」
当たり前だろうと言わんばかりな、余りにもあっけらかんと言われたその台詞に、アスナは小さく口を開けてまま固ま
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