六節・早朝の宿で少女は悩む
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いる。
皆が士気を上げた攻略会議の際もやはり冷めた頭で聞いており、感情を表したのは解らない単語を聞いたり、最後の戦いに全力を尽くせないのが不満であっただけで、アイテム分配に陣形の話など頭に入れておらず、潰走するのだから如何でもいいものだ、と聞き流していたのだから。
だからせめて明日の決戦の日である、日曜を迎える前に……最後にもう一度だけ、お風呂でのんびり手足を伸ばしたい、そう願ったから大きく道から逸れたとしても湯船へ浸かる事を譲らなかった。
これでもう思い残すことは無いと、アスナは軽く拳を握る。
“ 『どうせみんな死ぬ、何処でどう死ぬか早いか遅いかの違い』ってんなら……せめて百層までぶち抜いて、生還した先で好きんなった奴とくっ付いて、ガキに看取られて死のうや。な? ”
「っ!?」
―――その時不意に脳裏に響いてきたのは、グザがあの時言い放ったその言葉だった。
すぐに打ち消そうと頭を揺するも、彼女の心内とは反対に、彼の台詞に付いて思考してしまう。
現実でのアスナは、ある意味で束縛されていた生活を送っていた。
今に至るまで、両親が用意した道の上を、惑うこと無く進んでいたからだ。
もちろん、別の道へ進む事も出来たのであろうが……両親からの期待、そして彼等から送られる優しさ、それを裏切ることが出来なかった。
裏切られた際の父の、母の反応を、見たくは無かった。
幼稚園から現在の高校に至るまで、親が決めた施設へと迷い無く進もうとし、入ってからも成績上位に位置するよう勉学に励み、そして大学も結婚も就職も―――これからもずっと親の敷いたレールを走る、そんな人生となる筈だったのだ。
そんな彼女だからこそ……普通の年頃の少女の様に、誰が好きなのか〜といったガールズトークなど、トンと縁の無い場で生活してきた彼女だからこそ、グザの言った『好きな人とくっ付いて』と言う言葉を、頭から離せずに居るのだろうか。
それとも……味わう事も無く、感じる事も無く、過ぎ去るのが許せないのか。
(分からない……好きになる、ってどういう事なの……恋をするって……どういう事なの?)
そこまで言って漸く何の関係もない事を、自身の頭の内に止め続けている事に気が付き、強く頭を振って如何にか取り払った。
しかしながら心の内に生まれたモヤモヤは、小さく残って完璧には晴れず、せめてより足掻き食らいつき、HPを1oでも多く削れるようにと、剣でも振って心を落ち着かせる為に装備フィギュア画面を出して、持っている全ての武装を装着する。
元々武人気質では無いアスナだが、この世界に閉じ込められてから一番熱心に振るったのは剣なので、実戦にも活かせて無心
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