六節・早朝の宿で少女は悩む
[1/5]
[8]前話 前書き [1]次 最後 [2]次話
翌日の早朝。
鳥の声と厩舎から聞こえる動物達の鳴き声……それらもBGMやら設定された環境音の様な物なのだが、いやに澄んだそれらを耳に入れ、設定したアラームが鳴るよりも大分早くアスナは寝室のベッドから起きた。
周りに男二人の姿は見えないが、それも当然。リビングの方に居るからだ。
アルゴから説明を受け、少ないコルを払ったその後。
キリトが目覚めた後、困った事に寝室にはベッドが一つしか無く、なら誰がベッドを使うかと言う事で決める為の話し合いになる……筈だった、本来は。
しかし、グザは如何でもいいと手を振りあろう事か壁近くに座って早々に寝始め、キリトも頬を掻いて最初こそ言いづらそうではあったが最後はソファ−で寝るとハッキリ言いだした為に、結果消去法でアスナが使用することとなった。
……彼女自身、ベッドを本当に使いたかったとは言え、何だか押し付けられた感じで寝ることとなった所為か、無いとも言えない微妙な表情になったのは余談である。
ドアを開けてリビングに位置する部屋へ出てみれば、キリトはまだソファの上で気持ちよさそうに寝ていた。
ならばと壁に目を向けるが、どうも彼女より早起きだったか、グザの姿は何処にも見えない。
風呂に入る様な性分にも見えなかったので、多分だが外に居るのだろうと、アスナは辺りを付ける。
「お風呂、か……」
自分の思考の中に出てきたその単語をつぶやき、彼女は昨晩の事を思い出していた。……とはいっても、勿論ハプニングの事では無く、湯船につかっていた時のことだ。
幾ら連携の基本や専門用語の意味を、本来はキリトの口から教えてもらう為、という口実があったとは言え、彼女は知らぬ男性プレイヤーと一夜を共にしている。
普通に考えても、彼女でなくても有り得ない事だ。
―――早い遅いなど関係は無い、がむしゃらに前へと進み、動けなくなったら倒れて死ねばいい―――
そう言った事がこの世界で許された、唯一絶対の抗う術なのだと信じ、仮想での繋がりは意味を持たぬと言い聞かせ、今までの二カ月他人との縁を持とうとしなかった。
そんな彼女だからこそ余計にかもしれない。
そんなアスナがそんな意志を曲げ、逸脱してまで何故風呂に入りたいと思ったのか? それは……『第一層ボス戦がクリア不可能』だと思っているからだ。
グザと話した時にはスズメの涙ぐらいの希望も抱いたが……冷静に考えてみれば何せ相手は今までに約二千人もの命を喰らい尽くし、尚突破されぬアインクラッド第一層の迷宮区最奥に鎮座する、これまでとは比べ物にならない凶悪さを誇る難敵。
良くて犠牲の上での撤退、最悪全滅とて免れない……そう、アスナは考えて
[8]前話 前書き [1]次 最後 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ