五節・青少年のハプニング
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目でも窺え、そういった学に関して素人である筈のキリトにでも、ついている筋肉が無駄の無い物であと分かった。
また、彼は見た目こそ青年に入るが、これまでのやり取りでは老人にも近い空気を漂わせており、年齢の曖昧さに拍車をかける。
極めつけは―――迷宮区で見た時も、フィールドに出た時も、そして街中に居る時も、まるでこの世界の方が自分に合っている、もしくは慣れていると言わんばかりに、実に自然体で居る事だ。
街中なら兎も角、フィールドやダンジョンでは大なり小なり緊張状態に陥るのが普通なのに、グザからはその当たり前が殆ど感じられない。
一体何をしていた人間なのか……キリトはどうにも気になり、同時に聞いてもいいのかと引け腰気味になり、曖昧な心持のまま立ち上がった。
「んお?」
「うおっ……!?」
……すると、入口のドアの方から―――コン、コココンという特徴的なノックが聞こえてきた。リズム的な音であり、コレがただのノックでは無く何かの合図である事は、特にお約束など知らない人物でも分かる。
キリトがビクッ! と効果音がしそうなほどに驚くが、幸か不幸かグザは見ていなかったらしく、何も言わずパイプを吹かしていた。
次いで彼は顎に手を当て、グザの事は諦めたとしても、どうもアスナが来訪している事は知られたくないのか、キリトの表情が百面相もかくやの勢いで変わっていく。
……それを無駄にする気満々と言った空気の読め無さ(飽くまでキリト個人の空気)で、グザが扉に詰め寄り躊躇い無しで扉を開けた。
「ヌオッ!?」
「ハイどうも、新聞なら間に合ってるわな」
「や、新聞じゃアないゾ……じゃなくテ! キー坊! なんでコイツ此処に居るんダ!?」
「初心者へのレクチャーなのよ、そう警戒せんでくれや」
それだけ言うとグザは手を振り、扉の向こう側へと歩いて行く。どうも自分が関わってはいけない『取引』を行うという、独特の空気を察したらしい。
鼠のアルゴの名は知っているだろうから、尚更この行動を取る理由に足るだろう。
入れ替わりでアルゴが入り、諦めたらしいキリトの手によって扉が閉められると、中からの音は完ぺきに聞こえなくなった。
現実なら耳を添えれば聞こえるが、システム的に保護されているので、叫び声やノックに戦闘音以外は、シャットアウトされと外へとどかないのだ。
故に、グザには二人が何事で会話を交わしているか、微かな声も聞こえはしない。
再三パイプを吸いながら、グザはニヤニヤ笑っていた。
「気になるこたぁ気になるが……ま、オレちゃんが首突っ込む事でもねーわな」
その一言を最後に、暫く無音の時が続く。
否、正確に
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