五節・青少年のハプニング
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やがて呆然として肩を落とし、口をあんぐり開けた。
「そ、それ早く言いなさいよ……」
「嬢ちゃんよ、坊主は己の常識に沿って考えて、嬢ちゃんの考えは知らず、そもそもソレを聞かれなかった……早くも何も言うきっかけすら無かったやね。責めるのはお門違いってもんだ」
「ぐぅ……」
普段ふざけていても、こうやってちゃんと一理ある一言を吐くもんだから、アスナは唸るだけで、何も言えずに固まっている。
キリトも、散々気を使った鬱憤を晴らす為か、得意げに話し始めた。
「俺の借りている場所はな? 農家の二階で80コルかかるけど、ミルクは飲み放題だし眺めは良いし、ベットだってINNよりもずっとデカイ。オマケに風呂までついてるん―――」
「今何て言ったの?」
得意げに話してたキリトの台詞に嫌そうな顔で眉をしかめた……と、そう見えた途端、秒速でアスナはキリトの肩を掴み、嫌に真剣な様子で詰め寄った。
突然の豹変ぶりに、キリトは勿論自慢話を止め、どうしていいやら目を泳がせている。
片方で肩を掴まれ、片方で襟首を閉められている事を止めるのすら忘れ、彼は恐る恐る問いかけ始めた。
「み、ミルク飲み放題……?」
「いや、風呂付きって所だろうさ」
が、思い当たる単語を全部言う前に、グザが否定しながら割り込んでくる。
見事言い当てられたのか、アスナは又も眉をしかめながら、それでも大きく頷いている。
何とも言えない微妙な表情でグザを見た後、キリトはアスナの方へと向き直った。
しかし、彼が何かを口にする前に、アスナが言葉を重ねてくる。
「あなたの借りている部屋、あと何部屋開いてる? 私も借りるから案内して」
どうも状況を飲みこみきれていなかったらしいキリトは、咳払いし申し訳なさそうにきりだして来た。
「えっとさ、俺さっき部屋を借りてるって言ったよな?」
「いった」
「実はな? その家を丸ごと一つ借りてるって意味でさ……だから空き部屋はゼロなんだ」
「なっ……!?」
アスナは崩れ落ちそうになるも何とかこらえ、キリトと交渉すべく真剣に見据える。
「その部屋を……」
「あ〜、うん俺は十分堪能したしさ、部屋主を代わって上げるのは構わないけど……実は部屋を借りられる最大日数で……十日分家賃を前払いしててさ、しかもキャンセル不可なんだ」
「な、なぁっ……!?」
再度よろけて崩れそうになる体勢を必死に支え、次いでアスナは下を向いて唸り始めた。
どうしてもお風呂に入りたい、でも残った選択肢を取るには抵抗があると言ったところか。
別の部屋を探すにしても取られている可能性が高いし、ひとつ前の村に戻るにしても時間
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