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大刃少女と禍風の槍
四節・走破へはじめの第一歩
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十秒程悩み、やがて爽やかな笑顔を見せながら言った。


「君達は取り巻きのコボルドの潰しの腰が出ない様、Eアタッカー隊のサポートに回って欲しいんだ」


 字面だけならそれなりの役割である様な気もするが、言ってしまえば人数が少な過ぎて、何処にも配置できないし邪魔だから、やっぱり後方で大人しくしておいて欲しい……という意味でもあるだろう。

 キリト他の二人も気付いたらしいが、グザは苦笑するだけで済ませたから良いものの、アスナは明らかに非友好的な気配を漂わせている。

 彼女が何か口にする前にと、キリトは手を軽く掲げて答えた。


「重要な役割みたいだし、任せてくれ。頑張るよ」
「ああ、よろしくたのむ!」


 もう一度歯を見せて笑ったディアベルは、そのまま背を向けて広場中央の噴水まで戻っていく。

 彼が元の場所に付くと同時、アスナから抗議の声が上がった。


「何処が重要なのよ。様は引っ込んでおけって事じゃない……ボスに一回も攻撃出来ないまま終わるわ」
「嬢ちゃん、世の中には爪弾き役に徹にゃいけねー時もあるのよ。やいのやいの言っててもしょうがないわな」
「それにさ、三人じゃスイッチでPOTローテするにも、ギリギリ時間が足りないし。四人なら何とかなったかもだけどさ」


 そのキリトの発言に、アスナは首を傾げた。


「何それ……?」
「オレちゃんも知らんわな」
「はい……?」


 どう考えても初心者っぽいアスナは兎も角、なんと半裸で迷宮区をうろついていたグザまでもが、キリトの口にした単語に困惑の意を示した。

 アスナの得物は《細剣》であり、恐らくはソレの初級基本スキル《リニアー》のみを頼りに登っていたのだと推測できる。

 それだけでも十分に恐ろしい事だが、問題はグザの方だ。
 彼の得物は槍であり、近距離に近付かれると序盤も序盤な第一層時では、対処出来るスキルが初級スキル薙ぎ払いニ連撃《ヘリカル・トワイス》ぐらいしか無い。

 こんな層でソロで槍を使い生き延びるなら、それこそ『ゲームを捨てる』程に槍を使いこなさなければならない。
 それは槍道ではなく槍術を、しかも実戦に近い状態で何度もだ。
 明らかに矛盾したグザの実力に、キリトは眉をしかめている。


「ねえ、スイッチとかPOTローテって何なのよ」
「へ? あ……あ、ああ。それは後で説明するよ。立ち話いじゃ終わりそうにないし」


 アスナは彼の返答に頷き、グザは軽い調子でハイヨと返した。


 二回目の会議は各部隊(キリト達を除く)のパーティーリーダーの挨拶と、お金(コル)やアイテム分配の方法が決められ、この場はそれで解散となった。


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