思いと望み
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して動き出したと考えるのが妥当だな。
さて、どうするべきか。
仕掛けを直すのは簡単だが。
そうするには、今のアリアでは使い物にならない。
なにより、わずかとはいえ余計な手間と時間が増える。
『結晶』とクロスツェルの回収を済ませたまでは良かったが。
クロスツェルの死は、予想以上にアリアの足を鈍らせた。
本当に殺していたら面倒なことになっただろう。
マリアとアリアのこういうところは、本当によく似ている。
目元から受ける印象は正反対なんだがな。
気配を消していても、ベゼドラが現れる場所は判りやすい。
今のうちに押さえておけばまだ影響は少ないが、どうにも気に入らない。
クロスツェルが抜けてフィレスが加わったからだとしても。
動きが急に変わりすぎている。
まるで重要な何かを知ったかのような…………
いや、実際に知ったんだろうな。
「お前のせいか、『扉』のマリア」
ひび割れた石床に片膝を突いて、右手のひらを翼の紋様に押し付ける。
クロスツェルの記憶と、『鍵』であるマリアの記憶にあった『階』。
翼の下に『扉』として刻み込まれていた、巫マリアの意思。
あの男の力で留まっていた筈の空間はもう、ここには無い。
血の記憶もまったく気配を感じさせない。
不可動の空間を動かせるとしたら……フィレス。
発した言葉で万物の魂に命令を下していた、あの蒼の女神が。
マリアを具現化させた後で、ベゼドラと同行している。
「フィレス、か」
マリアの記憶がベゼドラとフィレスに伝わったのは厄介だ。
しかし、丁度良く泉で合流してくれたおかげでフィレスの性質は判った。
万霊の言を司る女神とは。
ある意味、完全なアリアよりも目を惹く存在だ。
自我を殺して操れば……
「……それも、完全ではないな」
一瞬は悪くない案だとも思った。
だがやはり、女神はアリアでなければならない。
さて。
フィレス、ベゼドラ、マリアを押さえるのが先か。
それとも、アリアを動かすのが先か。
アリアにも、そろそろ本気を出してもらいたいところだが。
立ち上がって目蓋を閉じ、俺自身の意識を元の器に飛ばす。
「マリ…… ?」
ゆっくり開いた視界を、見慣れた闇が埋め尽くす。
近くに感じる筈の柔らかな熱は無く。
ひやりと冷たい空気が、露出している肌を刺した。
抱き留めていたマリアが居ない。
脱ぎ捨てていた黒い法衣を纏い、ベッドから下りて辺りを見渡せば。
数千年間一度も使わなかった両開きの扉が片方開いたままになっている。
……歩ける余力など残していたのか
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