思いと望み
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や、実際に知ったんだろうな。
「お前の所為か、マリア」
ひび割れた石床に右膝を突けて、右手のひらを翼の紋様に押し付ける。
クロスツェルの記憶と鍵であるマリアの記憶にあった、扉としてのマリアの意思。あの男の力で留まっていた筈の空間は、此処にはもう無い。血の記憶も全く気配を感じさせない。不動の空間を動かせるとしたら……フィレス。発した言葉で魂に命令を下していた蒼の女神が、マリアを具現化させた後、ベゼドラと同行している。
「フィレス、か」
マリアの記憶が二人に伝わったのは厄介だ。しかし、丁度良く泉で合流してくれたおかげでフィレスの神力性質が判った。万霊の言を司る女神とは……ある意味、完全なアリアよりも目を惹く存在だ。自我を殺して操れば
「……それも完全ではないな」
一瞬は悪くない案だとも思った。だがやはり、女神はアリアでなければならない。
さて。フィレス、ベゼドラ、マリアを抑えるのが先か、アリアを動かすのが先か。
……そろそろ彼女にも本気を出してもらいたい所だが。
立ち上がり、目蓋を閉じて意識を元の器に飛ばす。
「マリ…… ?」
すぅっと開いた視界を、見慣れた闇が埋め尽くす。近くに感じる筈の柔らかな熱は無く、ひやりと冷たい空気が肌を撫でた。
抱き止めていたマリアが居ない。
脱ぎ捨てていた法衣を纏い、ベッドから下りて辺りを見回せば、数千年間一度も使わなかった両開きの扉が片方開いたままになっている。
……歩ける余力など残していたのか。
廊下に出てから後ろ手で扉を閉め、彼女が向かったであろう場所へ跳ぶ。
「……何をしている」
「………」
予想通りの場所……玉座の間の赤い絨毯の上に、マリアは膝を落として座り込んでいた。俺と同じ程度に伸びた長い白金の髪を床に散らして、背後に立った俺を愕然と振り返る。
「……な、にを……しようと、して、るの……?」
初めて会った頃よりもずっと艶めかしく成長した肢体を隠そうともせず、両の翼を失ってなお美しい女神は、喉を引き攣らせながら俺に問い掛けた。薄い水色の目が驚愕と……戸惑いに染まっていく。
「……貴方、は、アリアで何を、しようと……っ!!」
ぽろっと零れた涙が闇の中で光る。
……同じ。
マリアは感情の何処に重点を置いても変わらずマリアだ。
なら、この先はあの時と同じ。マリアは怒りと憎しみで狂い、俺はマリアを壊すだろう。
それはそれでも構わないが……
「! いや!! 触らないで!!」
「黙れ」
両手両足をなけなしの力で振り回して抵抗するマリアを担いで、ベッドの横に跳ぶ。
シーツの上に落とした体が軽く弾んで、小さな悲鳴が響いた。
「……っ答えてレゾネクト! あれは何!? どうしてあ……っ……!」
仰向けで沈むマリ
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