不明瞭な結末の後に
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にも分け与えろという辺り、愛紗と桃香の共通性を垣間見た気がした。
「し、仕方ないから食べてやるにゃ」
ゴクリと生唾を呑み込み、覚悟を決めた面持ちでじっと見やる孟獲。周りの者達も言葉さえ忘れて見入っていた。
あーん、と愛らしく開いた口にカロリーメイトが放り込まれた。
「……っ」
咀嚼して直ぐに蕩けた。今まで食したことのない甘いお菓子に堕ちないわけがなく。少女達もそれを見て急ぎ口に運び、堪らず蕩けてもはやお菓子の虜だった。
もはや戦う気力など完全に失せた。曖昧でグダグダにぼかされた空気は真剣な話をするには不十分。星も愛紗もそれを感じ取っていた。
「あ! なんでみんなしてお菓子食べてるのだ!? ずるいのだ!」
「おかえり、南蛮のモノ達に持分の半分を分けて食べているだけだぞ?」
「え……そ、それじゃぁ鈴々の分が減っちゃうのだ」
「なんだ、鈴々は自分だけで美味しいモノを独占する酷い奴だったとは……店長も秋斗殿も悲しむな」
「そんなこと……むぅ、一個しかないのに」
時機がいいのか悪いのか、鈴々まで帰ってくれば余計にうやむやになるだけ。
他愛ないやり取りの後、鈴々も戦っていた南蛮の少女達に不満そうにしながらも分け与え、とりあえずの所はひと段落といった様子。
――これでいいのか? 何も解決していないが……。
疑問が頭に浮かぶも愛紗は首を振って追い払った。
幸せそうにお菓子を頬張る孟獲や鈴々を見ていたらどうでもよくなった。
鬱屈に支配された思考も、血生臭いコロシアイの跡も……。
憎しみの感情が薄いのか、はたまた家族の死よりも優先されるモノがあったのかは分からない。それでも、南蛮との関係には少しばかりの希望が見えた気がした。
中途半端だが、それでもこれ以上血を流すよりは断然いい。
其処にだけ安心を感じて、愛紗は透き通るような青空を見上げた。
――きっとあなたと戦えば……こういう終わり方は出来ないのでしょうね……秋斗殿。
†
凱旋というには仰々しくない帰還を終え、三人は益州の本拠地に戻った。
戦後報告と処理の事務仕事を買って出た愛紗と、兵達のまとめを引き受けた鈴々とは別に、星は街へと繰り出した。
星の後ろには四人の少女がついて来ていた。といっても、桃髪の少女だけは星が背中に背負っていたが。
猫耳やふにふにの肉球を付けた少女達は愛らしく、人の目を惹いてやまない。
「本当に美味しいモノはあるんだろうにゃぁ?」
「ああ、まだ建設途中ではあるがそろそろ厨房は出来ているだろうし料理くらいは出してくれる。なに、出来ておらずと
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