暁 〜小説投稿サイト〜
乱世の確率事象改変
不明瞭な結末の後に
[8/12]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話
ーチを漁り、取り出したるは乾燥された兵士用の食糧。
 劉備軍なら、否、“あの店”を知っているモノなら誰でも分かるであろう非常食。

 パキリ、と二つに折った。次いで孟獲に投げ渡す。

「食べてみるがいい。安心してくれ、毒は入っていない。その証拠に私が半分食べてみせよう」

 受け取った孟獲は訝しげに星を見るも、警戒心を露わに匂いを嗅ぐのみ。
 ゆっくりと、サクサクと音を立てておいしそうに頬張る星は、腰に付けた水筒からお茶を一口。愛紗を横目で見てウインクを一つ。

「“かろりぃめいと”はやはり美味いな、愛紗よ」
「なんのつもりだ、星?」
「なに、助け舟を出してやったのだ。相も変わらず不器用だから見てられなかった」
「……お前はいつも一言多い」
「許せ、性分だ。それより見ろ、孟獲殿は食べてくれるようだ」

 正直な話、これ以上進展させることは望めなかった愛紗にとって、星の介入は頼もしかった。
 言われて視線を戻した先、ずっと匂いを嗅いでいただけだった孟獲がギリギリと歯を噛みしめた。
 食べたい、というのが透けて見えるような表情。しかしいろいろと発言した手前、素直に食べるのも癪らしく。

「おや、食べないのか。なら返して貰おう」
「ちょ、ちょっと待つにゃ!」

 ぐぬぬ……と不満ありありで唸る。チラチラと興味ありげに見やる少女兵士達は、折ったことにより溢れてきた甘い匂いによだれを垂らすモノが数名。
 戦の後では腹も減る。其処に美味しそうな匂いと食べてもいい許可を突き付けられれば……我慢する方が愚かしい。

「お前達、持ってる“かろりぃめいと”を半分に折って渡してやれ」

 当然、劉備軍の兵士達には行き渡っている。だから、と愛紗は少女達にも行き渡るように指示を出した。
 若干の兵士達が不足気に唸った。大切なおやつを渡すとなれば渋るのも詮無きこと。ただ、命令とあれば聞くしかないので、一人、また一人と少女達に渡していく。
 おずおずと疑いながらも受け取った少女達も孟獲と同じように匂いを嗅ぐが……孟獲が食べていないので我慢するしかない。
 食べないの、とでも言いたげな視線が孟獲に向けられる。そんな目で見るなというように孟獲が少女達を見回していた。

――先程まで戦ってコロシアイをしていたはずが、なんとも可笑しなことよ。なぁ、愛紗。

 口には出さないが、星は不思議と此れが劉備軍らしいと感じた。
 桃香や秋斗が此処に居たらどうするかと考えていた星であったが、食事の話を愛紗が持ち出してくれたからいい案が浮かんだ。

――食事とは和、か。あなたの言った通りのようですな、秋斗殿。それに愛紗もなかなか、やはり劉備殿の義妹と言うべきか。

 懐かしい思い出を振り返り、星の頬が僅かに緩む。
 そして兵士達
[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2025 肥前のポチ