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乱世の確率事象改変
不明瞭な結末の後に
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た。
 例えば国によって法が違うように、彼女達が守る秩序は彼女達自身が決めているモノだ。それを守らなかった時点で悪いモノがどちらなのかは言うまでもなく。

「南蛮王、孟獲殿。言い訳はしない。
 ただ、あなた方の手で殺された兵士達もこちらにはいるのだ」
「そんなの知らない――――」
「私が叩き斬ったその武器で!」
「っ!」

 声を荒げた。森の全てに響き渡ろうかという程の大声は孟獲の口を噤ませる。

「殺された人間はもう帰って来ない。私の偃月刀で、兵士の剣で、槍で、弓で……奪われた命はもう戻って来ない」

 寂しい声が森に響く。誰も一切の言葉を発せずに、愛紗に全ての視線が集まっていた。

「お願いだ、孟獲殿。家族を思うなら武器を置いてくれ。
 あなたが戦うのなら私達は武器を持たなければならない。私達はあなた方と争いたくはないが、関わらずにいられるほど安穏としていられないんだ。
 昔のこと、そして今回のことを白紙に戻せとは言わないから、どうか……話を聞いて欲しい」

 傲慢だな、と内心で嫌気が差した。こちらの言い分を押し付けているに過ぎないと頭で理解していても、これくらいしか言葉を選べない。
 きれいごとを吐くのも嫌で、嘘をつくのも御免だ。愛紗は其処まで器用にも、賢しくも在れない。

「……まだ美以達は負けてないにゃ」
「……なら次はどれくらいの家族が死ぬと思う? どれくらいの人間が死ぬと思う? 全滅するまで、あなたが死ぬまで繰り返すのか?」
「ぐ……」

 孟獲の周りの少女達は不安気な視線を浮かべていた。挫かれた心は戻らない。一騎打ちで遣り合って敗北し、有利なはずの森の中でも勝利を納められない。そんな相手と何度も戦いたくはない。
 身の丈にあった獲物以上を狙うのは狩りでは無い。それは無理無謀というモノだ。

「死にたくないなら従えって……? 話し合いの余地もないじゃにゃーか。おみゃーらは言ってることとやってることががめちゃくちゃだじょ」
「……」

 言葉に詰まる。瞑目した愛紗はまた眉根を寄せた。
 しばしの沈黙の後、ゆっくりと瞼を開いた。

「従え、とは言わない。戦う前にあなたが言っていたように、私達はあなた達とおいしい食べ物を分け合うような関係になりたいんだ」
「美以達は家族だからおいしいモノを分け合うのにゃ。お前らは家族じゃにゃい。だから却下にゃ」
「ほう……そなた等の知らぬ未知の美味があるとしても、ですかな?」

 背後から掛かった突然の声。愛紗がくるりと振り向くと、其処には悪戯っぽい笑みを浮かべた星の姿。

「未知の美味?」
「ああ、知らぬのも無理はない。こんな森の中で暮らしているのだ。ほら、例えばこのようなモノをそなたは知っているかな?」

 腰に下げた小さなポ
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