第二十話 それぞれの戦後(その2)
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か厄介な敵が現れた」
「厄介な敵?」
「うむ、フェザーンという厄介な敵がな……。どうやらフェザーンはエーリッヒを邪魔だと思っているようだ」
訝しげな顔をしている妻に今回の戦いでフェザーンが反乱軍の情報を故意に帝国に報せなかったと話した。そしてリヒテンラーデ侯の推測、フェザーンは我々の結び付きを危険視している。そしてエーリッヒを危険視している……。話が進むにつれ妻の顔が険しくなっていった。
「エーリッヒを養子に迎えたのは内乱を防ぐためであった。間違っていたとは思わん。実際に帝国は以前より遥かに安定している。我らも滅亡に怯える事もない。しかし対外的に見ればどうであろう、これまで有利に戦争を進めていた帝国が国内の不安定要因を解消した、より強力になった、そう見えたとしてもおかしくは無い」
話し終わると妻が溜息を吐いた。疲れた様な表情をしている。
「帝国、反乱軍の勢力均衡を望むフェザーンにとっては面白くない事態だと言うのですね」
「そうだ」
「それで要であるエーリッヒの失墜を狙った」
「その通りだ」
また妻が溜息を吐いた。
「婚約を発表しようと言うのは、エーリッヒの立場をより強めようという事ですのね」
「そうだ、そしてエーリッヒを守ると言う我らの決意表明でもある」
「……確かに今がその時かもしれませんわね。エーリッヒは宮中でも軍でも力を示しましたもの」
エリザベートが望んでいる。表向きはそれが理由になる。だが真実はフェザーンに対しての宣言であり帝国内の貴族に対しての威圧だ。エーリッヒはブラウンシュバイク公爵家の当主であり帝国元帥であり皇孫の婚約者であると改めて宣言する。
「どうせなら思いっきり派手にやりませんこと?」
「派手とは」
「宮中で戦勝祝賀パーティが開かれますわ。どうせならそこで発表し陛下から祝いの言葉を頂くのです。参列している皆が祝ってくれるでしょう……」
唖然とした。そんなわしを妻が面白そうに見ている。
「なるほど、宮中の公式行事に組み込むか……。ブラウンシュバイク公爵家の慶事ではなく帝国の慶事にしろと言うのだな」
「ええ」
「良いだろう。明日、リヒテンラーデ侯に話してみよう」
思わず笑い声が出た。あの老人も目を剥くだろうな、そして笑い出すに違いない、今のわしと同じように……。
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