第二十話 それぞれの戦後(その2)
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った事を幸運だと言う人間もいるだろう。だが幸運だと言う人間はその求められる物の大きさを知らない。それを知れば幸運と言うよりも苦行だと言うに違いない。指揮官席でじっと勝機を探る姿は勝利を得るためにもがき苦しんでいるように思えた……。
「見事なものだ、何度考えてもそう思うよ。良くあの状況から勝利を見つけたと……」
「同感だな。俺には出来ん。卿なら出来るか、ベルゲングリューン」
「それが出来るならもっと出世しているさ」
違いない、今頃は一個艦隊でも率いているだろう。二人で顔を見合わせて笑った。俺達は声を上げて笑う事ができる、だが公には出来ないだろう、おそらくほろ苦く笑うに違いない……。
あの最後に開かれた作戦会議、そこでの公の言葉。今も鮮烈に覚えている。
“相手の予測通りに動いて勝てるのは戦略的に圧倒的な優位を築いた時だけです。そうでなければ勝つのは難しい、相手も馬鹿ではありませんからね。まして我々は戦力的に劣勢な状態にある。相手の予測通りに動いては勝てません。相手の予測通りに動いていると見せかけて意表を突く必要が有ります”
相手の別動隊を撃破する、或いは後退してイゼルローン要塞攻防戦に持ち込むべし、そう主張する参謀達に穏やかな表情でイゼルローン要塞駐留艦隊との挟撃案を提示した。そして一時的にワーレン、ルッツ両艦隊を分離し駐留艦隊に預ける事で反乱軍の目を欺いた。
反乱軍は我々が後背に現れるまで眼前の敵が駐留艦隊だとは思わなかっただろう。我々に後背を突かれた時は愕然としたはずだ。何故こうなったと……。戦いというのは心理戦という一面がある。相手の心理をいかに読んで戦うか……。今回の戦いはまさに心理戦の占める部分が大きかった。それによって帝国軍は兵力の劣勢をひっくり返した。
「これで元帥に昇進か……」
「そうだな、あの時のヴァレンシュタイン少佐がブラウンシュバイク公で元帥閣下だ。世の中、何がどうなるか分からんな」
「全くだ」
ベルゲングリューンが困惑したような表情をしている。気持ちは分かる、俺も同じ想いだ。ベルゲングリューンが声を潜めてきた。
「俺達を嫌っているのかと思ったがそうではない様だな、ビューロー」
「うむ、そんな感じだな」
「今思えば大人げない事をしたと思うが……」
「あの当時は余裕が無かった。特別扱いされる公に反発もしたのかもしれん」
「うむ」
顔を見合わせて苦笑した。昔の想い出だ、帝国歴四百八十三年の暮れ、第三百五十九遊撃部隊での出来事。あれから三年だ、時が経つのは早かったのか、それとも遅かったのか……。俺やベルゲングリューンにとっては決して早くは無かった。しかし公にとってはあっという間ではなかったか、それほどまでに変転が激しい。
「それより俺達も准将に昇進だ。閣下と呼ばれることになるぞ
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