第九話・外伝「蒼真と……」
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の体に重なるように倒れてしまった。
「い、いてて……!」
気付いた蒼真は、なにやら巨大な肉厚な部位に顔が埋もれていることに気付く。それもいち早くその正体は何なのか気付いた。
――こ、これは……!?
「そ、蒼真殿……? はうっ……」
頭を抱えて目を開ける神無であるが、自分の胸元がやけにこそばゆく感じた。彼女の爆乳が、彼の顔面を包み込んでいたのである。
こうして彼女は甲高い悲鳴と共に蒼真の頬には真っ赤な手形が一つ浮かび上がったのは言うまでもない……
「……」
入浴後、神無から借りた浴衣を着て居間に座り続けている蒼真は、まだジンジン腫れる頬にできた手形を半目で撫でまわしていた。
「……蒼真、殿?」
「あん?」
お盆に料理を載せて運んできた神無に対し、当然蒼真は不機嫌に返事を返した。
「す、すまぬ……先ほどの件は、全て私に非がある。無理やりあのようなことをさせて申し訳なかった……」
顔を真っ赤にし、悲しそうな顔で料理をテーブルに並べた。
「いいって……ありゃ事故ってことにしてくれ?」
ため息をついて、形的には彼女の非を許すことにした。しかし、やはり怒っていることには変わりない。
そんな彼の背後から、シュンとなりながらも神無が料理を並べた。
「で、では……夕食ができたので是非召し上がってくれ?」
「ああ……」
振り向いて、蒼真は適当に手を合わせてから最初に目についたお椀を手に持って箸で口へ放り込んだが……
「……ッ!?」
――美味い!!
口ではどうも言葉で表せないほど、神無が振舞った料理は実に美味であったのだ。この美味い飯を口にすれば、先ほどの引っ叩かれたことなど忘れてしまいそうであった。現に、彼は先ほどの事故など忘れて勢いよく頬張り始めている。
「く、口に合うか?」
恐る恐る神無が言うが、蒼真は返答の代わりに彼女へ茶碗を差し出してこう言ってしまう。
「母さん! おかわり……あっ」
「母さん……?」
首を傾げる神無に対して、蒼真はつい顔を赤くしてしまった。かつて、自分の母親が作った料理と彼女が作った料理とがこんなにも重なったのである。
「あ……いや、その……」
「フフ……」
そんな頬を赤く染める蒼真に、神無は微笑みながら茶碗を受け取った。
「待っていろ? すぐに持っていく」
焚き飯をたらいに入れて彼女が再び持っていくと、蒼真はまじまじと彼女を見つめていた。
「ん? どうした」
「あ、いや……いつも、巫女装束着ているのか?」
彼は、エプロンを付けた巫女服姿の神無を見た。
「ああ、巫女たる者常にこの装束の姿だ」
「外出するときとか私服は持っていないのか?」
「周に一、二回程度故、着ていく服にはそれほどこだわらぬ」
たらいに入れた飯を茶碗に持って再び蒼真へ渡してやると、彼女はこう尋ねた。
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