第十六章 ド・オルニエールの安穏
第一話 パーティーにて
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まだ一年程しか経っていないが、語るものはそれこそ山程ある。全てを詳細に話そうとすれば、丸一日掛けても終わらないだろう。だから、ルイズはこれまでの大まかな流れについて凛に語った。
「……ふ〜ん、随分な大冒険だったようね」
空になったワイングラスを片手で揺らしながら、凛はつまらなさそうな声で呟いた。その声には、不機嫌な様子がありありと宿っており、勿論その事についてルイズは気付いていたがその理由が思い浮かばず同じように不機嫌な声を上げた。
「なによ……何か言いたいことがあるのなら言いなさいよ」
「ん? 言ってもいいの?」
向けられた声に、凛は挑発的にニヤリと笑った。
すると―――。
「ええ、聞かせてもらいたいわね」
―――予想外の方向から声が掛けられた。
「キュルケ?」
「あれ?」
新たにバルコニーに現れた影―――胸元を大きく開けた夜会服で着飾ったキュルケがルイズたちの下へと近づいてきた。
唐突に現れたキュルケの姿に、戸惑ったようにルイズが小首を傾げる。
近づいてくるキュルケを挟むように歩いてくる二人の人物。
学院生たちが着る目立つ夜会服とは違い、どことなく大人しい印象の夜会服を着た二人。その姿のうち一人、淡いピンクの可愛らしい夜会服を着た女性を見たルイズが、驚いた声を上げた。
「ルイズ、わたしもいるわよ」
「ちい姉さまっ!?」
「……ちい、姉さま? って誰?」
ルイズとちい姉さま―――カトレアをチラチラと見比べていた凛に、その答えを伝えたのは残り最後の人物だった。
「ルイズの姉で、学院の教師よ」
「……そういうあなたは誰よ?」
顔を向けてきた凛に、黒い派手ではないが、身体のラインを強調する夜会服を着た眼鏡を掛けた女性が、眼鏡の縁を上げながら口元に笑みを浮かべた。
「ここの学院長の秘書をしているロングビルよ。ミス・トオサカ」
「へぇ……で、私に何か用かしら?」
「ま、ね。あなたとは前から色々と話がしたいと思っていたから……丁度良いかと思って」
「そう……でも、よく私たちがここにいることが分かったわね」
一歩前へ出たキュルケが、声を向けてきた。
さり気なくキュルケたち三人を見回した凛が、改めて探るようにキュルケを見つめた。
凛の推し量るような視線に、キュルケは笑みを持って応えた。
「勘が良い人がいるので」
「うふふ、誰にでも取り柄の一つはあるものよ」
「あなたは一つどころじゃないと思うけど」
「あら? そうかしら?」
ロングビルの肢体を舐めるように向けられる視線に、カトレアは何時ものようにぽわぽわとした笑みを浮かべながらお礼を言う。何処かズレたやり取りをするカトレアとロングビルの姿に、凛は警戒を強めた視線を向け
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