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剣の丘に花は咲く 
第十六章 ド・オルニエールの安穏
第一話 パーティーにて
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は違う世界の人間。話を聞いて士郎の過去を知れば、あなたが今抱いている恐れがますます現実味を帯びてしまうから」
「あなたは―――何を……」

 息苦しそうにルイズは胸元を握り締めた。
 綺麗に着飾ったドレスに皺が寄る。

「そう、士郎が自分の下から去ってしまう―――元の世界に帰るかもしれない……そんな不安が……」
「……悪魔のような女ね、あなた」

 凛の話を遮るように、呟きに似たルイズの小さな声が上がった。
 声量は小さくとも、その中に含まれた感情の強さは、凛の話を止めるには十分な域であった。
 凛は苦笑を浮かべながら困ったように額に手を当てた。

「悪魔―――か……何故か良く言われるのよね」
「そこまで分かっているなら、もういいでしょ。やっぱりあなたと話すような事は何もないわね。ホールに戻らしてもらうわ」
「待ちなさい」
「―――何よ」

 凛に背中を向けて戻ろうと足を動かそうとするルイズの背中に、真剣な凛の声が届いた。
 思わず足を止めたルイズは、しかし振り向きもせず立ち止まった姿のまま凛に問いかける。 

「別にあなたばかりに話をさせようとは思ってはいないわ。こちらも色々と教えてあげるわよ」
「結構よ」

 間髪入れず断りの言葉を向けたルイズ。
 しかし、笑みを含んだ次の凛の言葉には、即断することは出来なかったようだ。

「そう? 聞きたくない? 例えば―――私がここにきた理由、とか」
「―――ッ!!」

 一瞬ルイズの身体が微かに浮いたかのようだった。
 背中を向けときながらも、チラチラと凛の様子を伺うルイズ。 

「聞きたいでしょ?」
「そんなの―――……」

 葛藤はあったが、このまま手の平で転がされ続ける事はできないと、否定しようとするルイズだったが、その言葉が完成する前に(悪魔)の誘いが耳に届く。

「教えてあげてもいいわよ。でも、その前にこちらの要求にも応えて欲しいんだけど」
「……取引き、というわけ?」

 小さく、弱々しく、しかしハッキリとした声でルイズは凛に確かめる。

「好きに捉えてもらって構わないわ」

 凛は明るい調子でルイズに話を促す。
 凛とパーティー会場の間を逡巡するように行ったり来たりするルイズの視線が、ようやく心が決まったのか身体を凛に向き合わせた。

「…………わかったわよ」
「それじゃ、まずはあなたと士郎との出会いから聞かせて貰うおうかしら―――」




 ――――――どれくらいの間話していたのだろうか、ルイズは揺れ動く視界と濁った思考の中、目の前で自分に笑みを向けてくる女をぼんやりと見つめていた。ルイズは女―――凛に士郎との出会いからこれまでの事について掻い摘んだ話をした。ルイズが士郎と出会ってから、
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