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剣の丘に花は咲く 
第十六章 ド・オルニエールの安穏
第一話 パーティーにて
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込むように数瞬の間が空いた後、ポツリと呟くように凛が口を開いた。

「―――世界を救う……ってところかしら」
「はあ?」
「ちょっと、あなた何を言って」

 キュルケとロングビルが慌てたように詰め寄るが、凛はそれを片手を上げて制した。

「残念ながらこちらはまだまだ調査中なんで詳しい話はできないけど、事の次第は私たちの世界だけじゃなく、この世界にも関係することよ」
「それはどういう……」

 口元に笑みを浮かべたまま、しかし何処か硬い表情のカトレアを制するように、凛は顔を横に振った。

「だからまだ話すほどの情報がないの。今はあなたたちが一番気にしていたことの情報だけで満足しなさい」
「そうはいうけど、あなたの言ったことってつまり、まだどうするか決めていないってだけじゃない」
「あら? バレた?」

 カトレアの袖を握り締めたまま睨めつけてくるルイズを、凛は軽い調子で肩を竦めた。

「バレバレよ」
「そうね。でもまあ、そこまで心配しなくていいわよ。今のところあいつを無理矢理連れ帰るなんてことは思ってないから」

 責めるように凛を見る目をルイズはますます険しくする。
 今にも唸り声を上げそうなルイズの様子に、凛は手の平を顔の前でひらひらと振った。

「大丈夫よルイズ。この方は嘘は言っていないわ」
「でも、ちい姉さま……」

 落ち着かせるようにカトレアはルイズの肩にそっと手を置く。肩に置かれた手に自身の手を置きながら顔を上げるルイズに、カトレアは宥めるように笑顔を向けた。ルイズはそんな姉の笑顔と凛を何度も見比べた後、肩を落としながら溜め息を吐いた。

「ま、今話せる事はこれで全部って事で納得してもらえた所で、私はパーティーに戻らせてもらうから」
「なっ、ちょっと待ちなさいよ。そんなこれだけじゃ―――」

 ルイズが折れる姿を見た凛は、バルコニーの柵から背中を離しホールへと足を向けた。目の前を通り過ぎていく凛の姿に、慌てた調子で声を掛けるルイズ。

「あなたから聞いた話だけど、随分と端折っていたでしょ。なら、こちらも提供する情報は制限させてもらうわよ」
「ぐ―――それは、全部言えば時間が」
「それはこちらも同じこと。ま、暇な時にでも士郎の過去について教えてあげるから、そんなに拗ねないでよ」
「拗ねてなんかいないわよっ!!」

 パチリとウインクしてくる凛に、「うが〜!!」と両手を突き立てて声を荒げるルイズ。
 そんなルイズにくるりと背中を向けた凛が、片手を上げホールへと歩いていく。

「はいはい。それじゃ、私は中に戻るわ。小腹も空いてきたところだし。じゃっ」
「あ―――待っ……」

 咄嗟に伸ばされる手は何も掴む事はなく、凛の姿は未だ喧騒が広がるホールへと消えていった。
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