十二話:狂気の笑み
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」
「まさか私が、いや―――私達が管理局に捕まるとでも思っているのかい?」
「ないだろうな……」
スカリエッティの返しに短く答えるだけに止める。
考えれば考える程、憂鬱になっていくだけだから。
ならば考えない方がいい。機械には感情が宿らない方がいいのだから。
「さて、私がなぜここに来たのかだね。君が私の前から姿を消して五年。かつての『魔導士殺しのエミヤ』の名が世間を賑わわせることも無くなった。“共犯者”として非常に寂しく思ってね」
「僕としては願ったりかなったりだけどね」
「君の所在を探させてもらったよ。するとどうだね、あろうことかあの魔導士殺しが少女と仲睦まじく暮らしているじゃないか」
切嗣の皮肉にまるで反応することなくスカリエッティはまさに道化の様に大げさに語っていく。
今すぐにでもこの場から離れて家に帰りたいという欲求が湧いてくるがそれもできない。
いっそここで殺してしまいたいとも思うが何とか理性で抑え込む。
この男の研究は、過程はともかく多くの世界と人を救うのだから。
「私はそのことに興味を抱いて調べた。すると何とも悲しいことに少女は闇の書の主として呪われた定めを受けていた」
「……それで?」
「当然、君がその子の元で何をしようとしているかを調べたよ。いや、君のことだから何をするかの見当は付いたがね」
余りにも嫌味ったらしい言葉に嫌気がさして、切嗣は吐き捨てるように話しだす。
そこに懺悔の意味合いが込められていることに本人すら気づくことなく。
「そうだ。僕はあの子を犠牲にすることで闇の書を封印するつもりだ。やっていることの本質はあの頃から何も変わっちゃいない」
「くくくくっ。ああ、そうだろう、そうだろう。何故なら君は誰よりも―――優しいからね」
その言葉を聞いた瞬間、切嗣は感情のままにトンプソンを起動させスカリエッティに突き付けていた。引き金を一度引きさえすれば容易く殺される。
それが分かっていながらもスカリエッティは狂気の笑みを浮かべ続けるのだ。
殺してもこいつは死なないと直感が告げ、苦々し気な表情のまま下ろす。
「勘違いしてもらうと困るな。私は君のことを尊敬しているのだよ。世界を平和にしたいという、人の身には過ぎた欲望を抱いた、誰よりも優しい人間としてね」
「そいつは“光栄”だね」
「人の身にして機械同然に振る舞い、救いを施し続ける。ああ、断言しよう。衛宮切嗣という人間はこの世の誰よりも人類を救っているとね」
彼は誰よりも衛宮切嗣という人間をかっている。
誰よりも正義を憎みながら、誰よりも正義に生きる矛盾が。
体を機械のように動かしても心はいつまでも人間のままの滑稽さが。
ちっぽけな一人の人間には重
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