十二話:狂気の笑み
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す言葉があるとすればそれは一つ―――共犯者だ」
視線に人を害する力があるのならば間違いなく殺せるだろうという目を向けるが狂気の科学者は不気味な笑いを零すだけだ。
不快、そうとしか言い表せない感情がその身を占める。
それでもこの男から目を離すのは危険だと理解しているためにここを去れない。
「なるほど、共犯者。ふふふ、確かにそれは相応しい名だ。私が作り上げた兵器でもって君は人を殺す。本来は、兵器は私の管轄外であるが、人間が何を為せば死ぬのかを見せてくれたのだ。実に有意義な時だったよ」
「自分のことながら反吐が出るよ」
「くくく、そう自分を卑下するものではないよ。君は人類が生まれて真っ先に生み出した殺人というテクノロジーを私に教えてくれたのだからね。人を知りたいのにその殺し方を知らないのでは無限の欲望の名折れだよ」
スカリエッティは生命の神秘に魅せられている。人間を知り尽くしたいと願う。
命が生まれ、そして死んでいくまでの過程。そこに興味を引かれる。
ならば、命が絶えるその瞬間にも興味を持つのは当然ではないのか。
人間がその歴史の全てを費やしたとも言える程の文化を知りたいと願うのは余りにも自然な流れではないのか。
彼は何も殺人という行為に楽しみを見出しているわけではない。
ただ、どうすれば肉体は壊れるのか? どうすれば生命は終わるのか?
それが知りたかっただけなのだ。
「命とは何とも儚い。そこに転がっている石一つあれば潰える。しかし、だからこそ命というものは何物にも代えがたい光を放っているのだとは思わないかね?」
「……答える気にもなれないな」
その言葉だけならば命を大切にしろと言っているだけにも聞こえる。
しかし、スカリエッティはそんなことを考える様な男ではない。
命が終わる瞬間を見たいだけならば得意のクローン技術で増産したヒトを殺していればいい。
だが、彼はそれを拒んだ。何の過程も踏んでいない命が潰えたところでそれは死ではないと。
モルモットを殺す行為は殺人ではないと。
殺すために生み出した“物”が死んだところでそれは興醒めでしかないと。
生きるために生まれ、全力で生を謳歌する“者”を殺して初めて―――殺人となるのだと。
切嗣はそれを、声を大にして否定したい。
命とはそこに生まれ落ちた時から、愛しく、尊いものなのだと。
どんな命であろうと等しく平等で失っていいものなど一つたりともないのだと。
誰よりも命を奪い続け来た男はそう口にしたかった。
己にその資格がないことを誰よりも理解しながらも。
「……それで結局、何をしに来たんだ。管理局が潜入しているこの町に捕まりにでも来たのか
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