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びよせて人を殺そうっていうんだからタイヘンです。アタマのネジがゆるんでるかもうネジっていうかネジの形したあんこぐらいのレベルです。ザ・ナンセンス。
ですが、そのぐらいの無軌道なおつむにこそ、こぁは価値を見出すのです。
人の殺意は愛情と同じぐらいに純粋で輝かしいものです。
嫉妬や嫌悪、憎悪など、マイナスな感情は説明できないくらいに緻密に錯雑に数多存在しますが、それは個々としては弱いものなのです。
好意や恋慕と同じで、プラスの感情がひとつの言葉で言い切ってしまえないのと似ていますね。
それらの感情の総称──集合体たる感情が『愛情』と『殺意』だとこぁは言います。
そのふたつのどちらかを、胸の奥の原野に潜めているのが人間だと。どちらもではなく、どちらか。
彼女の持論によれば、それはどちらが先に根付き、芽吹いたか。たったそれだけの違いだそうですが、真実は神のみそ汁というやつでしょう。
しかし殺意の側が表に発露されることはない。
なぜなら『モラルに欠ける』から。
「愛は美しい」と人は言います。だから賞賛され絶賛されます。
「殺意は醜い」と人は言います。故に誰からも認められません。
ひとは『モラル』という言葉を盾に、胸の奥へと本心をひた隠すのです。奥ゆかしさゆえに、恥ずかしがって、自分でも気づくことができない場所に。絶賛も蔑視もごめんだ、と。
人間は極端な生物なのに、とこぁは嗤います。
本当はどっちかしか持っていないのに、『普通は○○なんだ』と、自分でない誰か、「人」の言う普通、バランスに無理やり合わせようと必死になるのが滑稽だと。
本当は愛情しか持っていないのに、理解もできない敵を作り、
本当は殺意しか持っていないのに、誰かを愛そうなどと宣う。
それが社会……『モラル』という見えないモノに踊らされる人間である、と。
──────だからこそ。
こぁと対峙する、目の前の青年のような存在こそが貴重だったりするのです。
激しい殺意。
あるかどうかも定かでない『モラル』なんかに少しも踊らされない、自分の心の思うがままに行動する人間こそが、世界の枠外で待つ存在と対話する資格を持つのです。
愛情を秘められない者は天使と。
殺意を隠す気もない者は悪魔と。
この男の呼びかけが本気でなければ───こんなバカなマネに本気の願いを掛けられるような男でなければ、この儀式は単なるママゴト、男にとってのちょっとした黒歴史で終わったことでしょう。
でも届いてしまった。
その願いを、その殺意を成就させる為に、こぁが訪れてしまったのです。
そう、彼女は肉料理に釣られたワケではないのです。
……重ねて言いますが、肉料理なんかに決して釣られていないのです。そう、決して。えぇ、断じて。
色っぽく、
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