第29話
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が派手で豪快な袁家の軍師なのだ、桂花の名は嫌でも大陸中に広がる。華琳がそれを知っているのも当然である。
しかし二人は初対面だ。互いに面識が無く、名と活躍を知るだけなのに、他にも袁紹の家臣である娘達がいるなか、迷う事無く名を言い当てたのだ。
「……袁家の知、荀ケは有名だもの。知らないほうが可笑しいわ」
「そんな、光栄ですぅ」
かつての憧れ、曹孟徳に賞賛の言葉を掛けられた桂花は、顔を蕩けさせ喜んだ。
彼女の反応に華琳は満足そうに微笑む、荀ケと言い当てることなど簡単である。
袁紹には有名な二つの知がある。一人は桂花、二人目が風だ。
華琳と風はすでに面識がある。ならばもう一人、風と同等かそれ以上の知の空気を纏う者など、袁紹の周りには一人しか居ない。簡単な消去法である。
当の桂花は感激しているので、タネをばらすまでもあるまい。
「……フフ」
「む!?」
華琳が蠱惑的な笑みを浮かべると、袁紹が身体を強張らせた。
あの表情には見覚えがある。私塾いた頃の話だ、袁紹に比べ優等生だった華琳だが、何か悪巧みするときには顔に出る。それがこの蠱惑的な笑みだ。彼女にとっては可愛い悪戯の心算らしいが、華琳の冗談や悪戯は心臓に悪いものばかりである。
その被害に遭うのは白蓮が多かったが、袁紹も幾度が標的にされていた。
今その笑顔を華琳が浮かべている。警戒するのも無理は無い。
「いい娘ね気に入ったわ、私の所に来ない?」
「……え?」
「勢力としては見劣りするかもしれないけど、優遇するわ。それに私達――相性が良いと思うの」
呆ける桂花の頬を撫でながらとんでもない発言をする。なんと大勢力の軍師を勧誘しているのだ。
しかも、その主の目の前で。
「……」
「どうかしら、悪くない条件だと思うけど?」
顔を伏せた桂花の耳元で、何やら囁いた後言葉を続ける。『条件』と言う最後の言葉から、曹操軍での待遇でも言われたのだろう。
桂花の表情は袁紹から見えない。
「お断り致します」
「……何故かしら?」
少しの間をおいて断りの言葉を口にする桂花。ここまではっきりと断られるとは思わなかったのか、華琳は眉を僅かに吊り上げ不機嫌そうな顔をしている。
「私の主は後にも先にも袁本初ただ一人です。それに――」
「それに?」
「待遇で誓いを反故にする者など、曹操様が求める人材に値しない――と愚考致しました」
「…………フフフ、アハハハハ!」
「か、華琳様!?」
桂花の言葉を聞いた華琳は笑い声を上げる。それも、今までに見たことが無いほど豪快な声だ。
その証拠に、彼女の家臣達が目を丸くしている。
(見事、ますます気に入ったわ荀
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