第29話
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「はいはーい、次はボク! 同じく曹操様の親衛隊隊長の一人で、春……夏侯惇様の補佐。許緒と言います!」
次に前に出たのは、典韋よりも長めな桃色の髪を頭上で束ねた。二つのお団子が特徴的な許緒だ。
典韋と変わらぬ年齢で、二人は幼馴染だとのこと。
元気良く自己紹介する姿は愛らしく、こちらも成長が楽しみである。
「へへーん、流琉より上手に挨拶出来たもんね」
余程嬉しかったのか、許緒は典韋に絡むような言葉を発した。
それを聞いた典韋は、頬を僅かに膨らませ反論する。
「む、季衣も春蘭様の真名を言いかけたじゃない!」
「でもボクは言わなかったよーん」
「私の言葉を真似て自己紹介したくせに」
「なにおー!」
「何よ!」
売り言葉に買い言葉。そんな調子で口論していた二人は、気がつくとポカポカと可愛らしく殴り合いを始めていた。
同い年で幼馴染、同じ陣営で同じ役割。互いに思うところがあるのかもしれない。
きっとこの二人は良き友であると同時に、高みを目指しあう好敵手ライバルでもあるんだろう。
見かねた夏侯姉妹が止めに入り、華琳が袁紹に謝罪を口にしたが。
彼は特に不快感を抱かず、むしろこの空気を好んだ。
袁紹が普段良く口にする名族の名は伊達ではない。彼と対面するほとんどの者は袁の名に萎縮し、何を話そうにも世辞や建前が前提になる。
内を晒しながら彼と会話できる者は少ない。名族に生まれ落ちた定めと、当の昔に受け入れてはいるが、寂しくもある。
故に、斗詩や猪々子を始めとした彼の家臣達。華琳や白蓮などの、萎縮することなく同じ目線で会話出来る者は貴重である。
そして二人の少女は、袁紹に萎縮することなく自己を表現した。彼はそれが嬉しいのだ。
最も、華琳と袁紹のやり取りで緊張が薄れただけなのだが――……。
少しして、二人の少女がお互いの姉貴分に取り押さえられると。まだ紹介を済ませていない三人が袁紹の前に出る。
ふと、先程まで騒いでいた少女達が気になり耳を澄ますと、離れた所で説教ほする声が聞こえてきた。
『駄目だぞ流琉。売り言葉に買い言葉になることは、流琉なら予想出来たはずだ』
『はい……、ごめんなさい秋蘭様』
『駄目だぞ季衣、徒手空拳の場合は相手の動きを良く見てこう。ダー! ズバッ!って感じだ』
『はい春蘭様!』
軽く諌める秋蘭の言葉に紛れ、妙なモノが聞こえた気がするが――きっと気のせいだろう。
「三羽鳥が一人、楽進。曹操様に見出され、末席に据えて頂きました。お見知りおきを」
袁紹が軽く現実逃避していると、残った三人の内一人、楽進が名乗りを上げた。
銀髪で前髪が短く、長い後ろ髪を編みこ
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